遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

濱田庄司展/東洋陶磁美術館

濱田庄司/HAMADA SHOJI―堀尾幹雄コレクション」

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               掛分指描 大鉢(かけわけゆびがき おおばち)
                  1943年(昭和18) h:16.2、d:52.8cm 


3連休の真ん中の日に、仕事のために出社とあいなった悲しい土曜日。

しかし、15時に解放されたので、一転、幸せな土曜日となった。


明日で最終日となる濱田庄司の特別展を開催中の、

大阪は中ノ島、東洋陶磁美術館へ徒歩で足を向ける。


濱田庄司は第1回の人間国宝に指定されたお方で、

私は彼の作品にはじめて会ったのが、倉敷は大原美術館であった。
大原美術館には、濱田のベストコレクションがあるといっても間違いないと思うが、

ここ東洋陶磁美術館に寄贈された堀尾コレクションは、

200点を数え、倉敷に匹敵する作品群だと言っても、

これまた間違いのないことである。


会場は、例によって女性が80%くらいを占め、

すべての年代の男は、女性の付き人がほとんどで、

私のような男ひとりでの鑑賞は、1%くらいだろうか。


陶磁器のコレクターは男が圧倒的に多いのに、

こういう作品展は女性が圧倒的に多いのが、不思議だ。

しかし、何十万円の贋物をつかまされるコレクターより、

800円で本物をワンサカ見ることを選ぶことの賢明さ、

ここでも女は男より上を行く。


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               赤絵 角瓶(あかえ かくびん)
                1956年(昭和31)頃 h:26.4、w:11.6×11.5cm 

戦前から1970年代までの作品群は、

茶碗、壷、皿、水差しなど生活観のある器のオンパレードである。

その、バラエティに富んだ色彩や意匠や形は、

ひとつひとつがユニークで、同じ作者の作品とは思えない多様性がある。


濱田の作品は、見ると欲しくなる気分になるのが、

なんとも不思議な気がする。

私には絶対に買えない至宝なのだけれど、何とか買えそうな錯覚に陥る。

私のような人間がコレクターになって、

贋作をつかまされるのであろう。


私の生まれたころに作られた「鉄絵 茶碗」にとても惹かれたが、

こんなのがひとつくらい我が家にあっても不思議じゃない、

というような錯覚に陥る。



一度見た作品を、順路を遡って心を入れ替えてまたじっくり鑑賞、

というようないつもの方法で、

常設なのだろうか、

高麗の青磁や宋の白磁などの安宅コレクションにも、ノックアウトされ、

国宝の「油滴天目 茶碗」に無条件降伏し、

不審者のように何度もふらふらと彷徨い、

2時間ばかりゆったり別世界に浸っていた。

これら常設展示の作品のことも、また記事にしてみたい。