遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

RURIKO/林真理子

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RURIKO  林真理子 角川書店




出版元の「おすすめコメント」、

<<きれいな女はこう生きろ!昭和の銀幕、恋に生きた女優ルリ子がいた。昭和30年代。

裕次郎、旭、ひばり。銀幕の内側には、恋と冒険が渦巻いていた!映画スターとの初めての恋、

しかしルリ子は嵐の中でも自分を貫き、純愛に生きた。銀幕に咲いた男と女の交流を描いた一大ロマン。>>

に惹かれて、しかし少しためらったのち購入。


浅丘ルリ子の半生を林真理子がまとめた書物。



偶然、「蟹工船」の新潮文庫の解説を書いている、

蔵原惟人(くらはら これひと)の名を目にして、はっとした。

ルリ子の恋人の映画監督の叔父で文学評論家が、その人だったからである。



14歳で日活のオーディションに合格し、

10年で100本の映画に出演しても、

ルリ子は石原裕次郎小林旭の「添え物」でしかなかった。



中学生のルリ子は掛け値なしの美少女で、

古い映画の断片だけでも、そのことは立証できる。


ノーメイクにもアップにも耐えられる、その恵まれた美貌にもかかわらず、

本書の表紙のようなメイクをほどこし、

個性ある自立した女優をめざしたのは、

恋人である映画監督の映画に主演した頃からである。




かつての恋人が、美空ひばりと「世紀の婚約」。

そして豪華絢爛なる結婚披露宴に、ルリ子も出席する。

そして、裕次郎などと新婚生活をおくる新居にも招かれる。

とても違和感のある披露宴、生活感のない新婚生活を目にする。



ルリ子もやがて、年下で格下の二枚目俳優石坂浩二から熱烈なプロポーズを受けて、

たった一度の結婚をする。



この二つの結婚は、不幸な結果に終った。


メルセデスを手に入れたけれど、ほんとはポルシェが好きで、

メルセデスは誇らしげにガレージに停めておくだけ。

そんな、見栄張りへーちゃんに三行半を突きつけて、

早々と家を出るメルセデス、じゃなかった、ルリ子。



私は、日活映画では、最初に観た映画の影響で、

浜田光夫吉永小百合が憧れだった。


浅丘ルリ子はきれいなお姉さんで、

語り口調も性格も、さっぱりさばさばしていて、

親近感は湧いてこないタイプの女優であった。

でも私の物心ついたときから、ずっと気になる存在の大女優で、

なにも林真理子が書かなくてもいいだろうにと思いつつ、

面白く読んだ。



「RURIKO」はほとんどフィクションの創作小説だと林真理子は言うが、

私はほとんどノンフィクションだと思う。

満州での甘粕正彦とルリ子の接点などは、

どうでもいい取るに足らないフィクションだろうが・・・)


ディテールがフィクションだろうが、

スター達の実名で綴られた大きな物語の根幹は、

昭和の実録本であると言ってもいい。


お知り合いや図書館で借りて読まれたら、と思うしだいである。