先月末に亡くなられた小田実追悼番組、
世界わが心の旅「ベルリン生と死の堆積」を観る。
1993年に放送されたものの再放送で、
私も前にも観たことがある番組であった。
小田の原点は、大阪空襲で逃げ惑った少年時代にある。
彼に限らず、太平洋戦争の体験が、
その後の生き方に大きく影響をおよぼした人たちが多くいる。
しかし、その人たちの数は戦後62年を迎えて、
日に日に少なくなってきている。
1980年代の1年半の間、ベルリンで生活をした小田が、
思い出の地や旧友を訪ねる番組で、
最後に訪れたのがプレッツェンゼーの処刑場跡であった。
その地で、例の早口で視聴者へのメッセージを語る小田が、
嗚咽をもらした。
アウシュビッツなどでユダヤ人の大量殺戮を行ったナチは、
プレッツェンゼーでは反政府主義者であるドイツ人の処刑を行った。
この処刑場跡の床は、いまだに血糊のあとが消えないままである。
死を賭けてナチに抵抗して処刑されたドイツ人たちが存在したことを、
私たちに涙声で語りかける小田実。
そんなに早口で先を語らなくても、
絶句しているだけでも思いはちゃんと伝わっているよ、小田さん。
と、私は思っていた。
思いはこの先もずっと伝わっているよ、と。
合掌。