遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

情熱のタクト ~佐渡裕ベルリンフィルへの挑戦

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「情熱のタクト ~指揮者 佐渡裕 ベルリン・フィルへの挑戦~」

BSプレミアム 6月11日(土)後10:00~11:29

指揮者・佐渡裕さんが今年5月世界最高峰のオーケストラのひとつ"ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団"の指揮台に立った。番組では、ベルリン・フィルに挑んだ佐渡さんの3か月間に密着。小学校の卒業文集に書いた夢をかなえた佐渡さんの道のりを紹介するとともに、通常は撮影許可がおりない、本番前2日間のリハーサルのすべてを撮影。世界最高峰の舞台に向けて、指揮者と超一流の演奏家たちの真剣勝負の模様をお送りする。

小学6年生(昭和40年)の運動会の帽子取り競争で転んで、左手首をにヒビが入ってしまった私。

その治療をしてくれたのが、柔道の高段位の免状を壁に飾った接骨医。

ギプスが取れるまで何回か通ったのだが、もの静かで大きなおじさんだったが、

近年、その接骨医が指揮者の佐渡裕の祖父に当たることを知って、なんだか嬉しくなった。


佐渡裕が50歳にして、はじめてベルリン・フィルを振った。

(小学校の卒業文集に書いた自分の夢を50歳で叶えたのだ、偉いなあ。

ちなみに私は「カー・デザイナー」だったのだが…。)

そのリハーサルと佐渡裕と、ベルリン・フィルの楽団員のインタビューを収録した

NHKハイビジョンのドキュメンタリー番組「情熱のタクト」をTV鑑賞。


リハーサルは、2日間にわたり、1日それぞれ3時間。

本番のプログラムは、武満徹の作品と、ショスタコーヴィチの「交響曲 第5番」。

NHKは、ショスタコーヴィチのリハーサル風景をたっぷり見せてくれた。


私の大好物がオーケストラのリハーサル風景で、

ましてや日本人指揮者がベルリン・フィルを相手のリハーサルなどという設定は、

有り難くてありがたくて、録画はもちろんのこと、すでに再放送まで鑑賞してしまった。


リハーサルで、どのように作品をつくり上げていくのかというプロセスが大好物なのだが、

加えて、わずか2回のリハーサルで、気位の高い世界最高峰のベルリン・フィルを、

我らが佐渡が、どのように手の内に入れるのかというプロセスが楽しみで、

ワクワクして番組を見始めた。


佐渡の指揮者としての原点が、彼が学生時代にコーチとして面倒を見ていた、

京都の女子中高校の吹奏楽部にあるという。

その女子高の吹奏楽部で全国大会を目指していたが残念ながら銅賞に終わり、

審査員から「演奏会では受けてもコンクールには通用しない演奏」だと、

意味不明の評価を受けたのだそうだ。

結果はともかくも、その女子高生と音楽を作り上げた魂が、彼の原点なのだという。


素人同然の女子高生に比べたら、百戦錬磨のベルリン・フィルの方が組し易しかもしれないのだが、

リハーサルで演奏を止めて指示を出す佐渡は凛々しい。

ただ、笑いながら互いに目配せしたり、なにやら耳打ちしたり、

同じパート同士で話し合ったりしている楽団員を目にして、私は不安になった。

なんだか彼らが意地悪そうに見えて、我が子を里子に出す親のような気持ちになった。

初めての指揮者を品定めしているように見えるのだが、本当のところはよく判らない。

しかし、佐渡は、自分の作品への解釈をわかりやすい方法で伝えることに成功し、

楽団員の心を響かせることにも見事に成功していた。


本番では、耳の肥えたベルリンの聴衆にも満足してもらえたようで、

演奏後の拍手は鳴り止まなかったと番組で紹介されていた。

この演奏会も録画したので、ゆっくりじっくり鑑賞することにする。

会場を後にする市民へのインタビューから、佐渡はベルリンに受け入れられたように感じた。

ベルリン・フィルで再演できれば、楽団や市民から受け入れられたあかしになるようで、

いまから楽しみなことである。
 

佐渡裕は、兵庫県は西宮の兵庫県立芸術文化センターの常任指揮者で、

私がいつでもすぐ聴きに行ける所で活動している。

彼は、年末の第九は毎年何公演かの指揮をするのだが、

言うまでもなく、関西では真っ先にチケットを売り切る指揮者である。

すぐ近くに彼がいるにもかかわらず、私はまだ生演奏を聴いたことがない。

そういえば、イチローのプレーも一度も見ないままで、イチローはメジャーに行ってしまった。


佐渡も、そう遠くない将来、メジャーに行ってしまう予感が、

チケット買いに走らなければ…。