遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ああ青春/Netflixの実話ドラマ「ビリオンダラー・コード」

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Netflix配信されているドラマ「ビリオンダラー・コード」(全4話)の紹介です。

この作品は珍しいことにドイツ製作で、ベルリンの壁が壊され東西ドイツが統合された後の、Windowsが発売されパソコンが普及し始める少し前のお話で、実在の人物による実話に基づく物語です。

ベルリンの才能ある若者たちが、もとは芸術作品の創作のために編み出したアルゴリズム(PCに仕事をさせる処理手順や画像処理のためのプログラム)を利用した「テラ・ビジョン」という宇宙から地球のどこにでも飛んで行けるアプリを完成させました。

そして「テラ・ビジョン」は、京都で開催された94年の世界的なIT先進技術の会議にも出品され好評を博しました。

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しかし、その後ドイツの若者たちはリンコンバレーにも行ったり紆余曲折を経た結果、「テラ・ビジョン」はスポンサーが見つからないまま商品化されず普及することはありませんでした。

時は流れ、2005年にGoogle Earthが発表され、それを見た「テラ・ビジョン」の開発者たちは、自分たちのアルゴリズムが盗まれたと気付きます。そこから、ドイツの「テラ・ビジョン」開発者と、訴えられた巨人Googleの裁判がはじまるのでした。

京都で発表する前の「テラ・ビジョン」開発のスポンサー探しの過程で、ドイツテレコムの出資を受けるための査定会議のようすが、(いまだから言えるのですが)いかにも90年代という感じでユーモラスでした。

少し前に、USBを知らない日本のサイバーセキュリティ担当大臣が、「パソコンは打ったことがない」と国会答弁していましたが、あれほどひどくはないものの、30年前のドイツのテレコム(!)幹部にインターネットの概念はあまりなかったことが判ります。

ドラマは、人間的な展開を見せますのでITに疎くても関係なく楽しめます。

実際の裁判の前に、原告側の会議が何度も実施され、Googleの弁護士が衝いてくることを想定してさまざまなシミュレーション問答を実施するのですが、法廷ドラマを彷彿とさせる迫力に富んだ緊迫するものでした。

視聴者は、当然に「テラ・ビジョン」開発者たちへの思い入れがありますので、(ネタバレになるので詳しいことは書きませんが)その思い入れを利用してのストーリー展開が巧みで、ミステリ要素もあって楽しく見ることができた全4話(トータル265分)でした。

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