ドイツの貴族で鉄鋼王の一家の退廃と凋落とナチの台頭を、
英語のシナリオを駆使して、
イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランスなどの国際キャストで作り上げた。
かくもとりとめのない条件にも拘らず、
製作後40年経ったいまでも色褪せない耽美的世界を描いたヴィスコンティは、
偉大な映像作家だったというほかない。
鉄鋼王の華麗なる一族を舐めるように描くことによって、
狂気の時代や人を、徹底的にリアルに私たちの目の前に引き出してくれた。
スウェーデンの女優イングリッド・チューリンの二人は、
ほの暗いトーンのスクリーンに妖艶な光を放っていて印象的である。
また、ダーク・ボガードとシャーロット・ランプリングは、
後の「ベニスに死す」や「愛の嵐」で異彩を放つことを容易に想像させる存在感であった。
美しくも醜い人たち、
それ以上でもそれ以下でもない人たちを描くことにかけては、
イタリア作家の独壇場である。
アメリカ映画とは一味違った、ヨーロッパならではの名作である。