モダンタイムス 1936米 MODERN TIMES
■製作・監督・脚本・音楽 チャールズ・チャップリン
■撮影 ローランド・トザロー/アイラ・モーガン
■音楽 アルフレッド・ニューマン
■出演 チャールズ・チャップリン/ポーレット・ゴダード
チェスター・コンクリン
1936年製の映画「モダンタイムス」。
70年前に、チャップリンは近代化が人に及ぼす影響に憂いていた。
かれは、ずっと放浪者「チャーリー」の主演映画を作ってきていた。
無声(サイレント)映画の時代からずっと同じスタンスだった。
犬のような自由な生活をするチャーリーをとおして、
おばかな「守り」に入った人間たちを、喜劇として揶揄してきた。
小難しいことは抜きにしても、彼の映画は文句なしに可笑しいし、
完璧に美しい。
1952年にチャップリンは、レッド・パージの嵐の中で米国を追い払われたが、
放浪者には冷たいアメリカらしい仕置きである。
この映画の時代は、すでに音の出る(トーキー)映画が出て来て久しかったのだが、
「モダンタイムス」は、ほとんどサイレントで、台詞はない。
しかし、チャップリンは映画の中で歌をうたう。
彼の声がはじめて発せられた、歴史的な場面であったが、
でたらめな言語で歌をうたった。
でたらめな言語も、「守り」に入った愚か者、
国境という線引きをしたがる者たちへの、
アンチテーゼなのである。
見事なローラースケートは披露してくれるが、
この映画で彼は、最後までセリフを口にしなかった。
言葉がなくても観客の心に入っていけるという確信は、揺るぎがなかった。
放浪者チャーリーは、この映画が最後となる。
山高帽にちょび髭、ぶかぶかの衣装と靴に、ステッキ姿の彼はこれが最後であった。
長い一本道をポーレット・ゴダードと歩いていく後姿、
輝く未来を約束してくれるような、美しいラストシーンである。