遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

外国映画ぼくの500本/双葉十三郎

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外国映画ぼくの500本  双葉十三郎  (文春新書)


1970年大阪万国博覧会のとき、私は高校2年生。

外国映画との付き合いはすでに始まっていて、

定期試験の最終日には、下校時に友と学生服のまま映画館に行ったりしていた。

そのことは校則違反でもなんでもなく、ちょっと自由な正しい高校生だったわけで、

そのころ、つまり1960年代の終わり頃から、私の映画人生がスタートしていた。


大学生になってアルバイトを始めるようになって、

映画雑誌「スクリーン」を毎月購入出来るようになり、

同誌の双葉十三郎の「ぼくの採点表」を参考に、

高採点の新作映画やリバイバル上映される映画を、片っ端から観ていった。


「外国映画ぼくの500本」は、

双葉が生涯で見た1万数千本のなかから選ばれた500本が紹介されている。

以前ご紹介した「外国映画ぼくのベストテン50年」の新書版である。
双葉の採点は、星の数(☆20点★10点)であらわされるが、

☆☆☆☆★★(90点)が彼の採点の最高点で、

生涯でわずかに15本の映画に、その最高点を進呈している。

☆☆☆☆★(85点)を付けられた約80本の作品群と共に、綺羅星のごとき映画群である。

もちろん、個人の好き嫌いで採点されているので、万人が認めるところと一致する事はない。

フランス作家たちやヒッチコックベルイマンなどがお気に入りで、

双葉の監督の好き嫌いの度合いが、作品の採点に影響している感がある。


生涯15本の満点映画だが、一度採点してしまったら生涯変更できないのか、

ベスト500には入るでしょうが、ベスト15にそれが入りますか?

というようなものもある。


「ザッツ・エンタテイメント」は、MGMのミュージカル映画のカタログのようなもので、

MGMのミュージカルの歴史や作品群がすごいのであって、

「ザッツ・~」の90点には首を傾げたくなる。

それはともかくも、ならば「サウンド・オブ・ミュージック」が、

ベスト500に入っていないのも実に不思議で、

500本に入らなかった名作についても語ってほしかったと思う。

ジュリー・アンドリュースが嫌いなのかな?


ともあれ、これ1冊あれば、過去の名作は「ほぼ網羅」されているわけで、

タイトルと採点を参考にして、楽しまれたらいかがであろう。

古い映画はいまや「古典」と呼んでもいいと思う、

モーツアルトやベートーベンやマーラーやラベルを楽しむごとく、



今後の新作映画を一切観なくてもいいような、ラインナップである。


以下、☆☆☆☆★★(90点)、☆☆☆☆★(85点)のみご紹介。

双葉十三郎 ぼくの採点表」

☆☆☆☆★★(90点)

1925 黄金狂時代/チャールズ・チャップリン
1930 西部戦線異状なしリュウイス・マイルストン
1937 大いなる幻影ジャン・ルノワール
1939 駅馬車ジョン・フォード
1942 疑惑の影/アルフレッド・ヒッチコック
1945 天井桟敷の人々/マルセル・カルネ
1950 サンセット大通りビリー・ワイルダー
1951 河/ジャン・ルノワール
1952 恐怖の報酬/アンリ・ジョルジュ・クルーゾー
1952 禁じられた遊びルネ・クレマン
1953 水鳥の生態/ドキュメンタリー
1957 野いちご/イングマール・ベルイマン
1961 突然炎のごとくフランソワ・トリュフォー
1973 スティング/ジョージ・ロイ・ヒル
1974 ザッツ・エンタテイメント/ジャック・ヘイリー・ジュニア


☆☆☆☆★(85点)

■1920年代以前
月世界旅行ジョルジュ・メリエス
イントレランス/D・W・グリフィス
カリガリ博士/ロベルト・ウィーネ

■1920年代
キッド/チャップリン
ドクトル・マブゼ
幌馬車
アイアン・ホース/ジョン・フォード
結婚哲学
ジークフリート
戦艦ポチョムキンエイゼンシュテイン
ビッグ・パレード/キング・ビダー
巴里の屋根の下/ルネ・クレール

■1930年代
会議は踊る
自由を我等に/ルネ・クレール
暗黒街の顔役/ハワード・ホークス
街の灯/チャップリン
仮面の米国
グランド・ホテル
巴里祭ルネ・クレール
四十二番街
或る夜の出来事フランク・キャプラ
商船テナシチー
たそがれの維納
オペラ・ハット/キャプラ
孔雀夫人/ウィリアム・ワイラー
望郷/ジュリアン・デュヴィヴィエ
我等の仲間/デュヴィヴィエ
舞踏会の手帖/デュヴィヴィエ
風と共に去りぬヴィクター・フレミング
スミス都へ行く/キャプラ

■1940年代
わが谷は緑なりき/フォード
ヘンリイ五世/ローレンス・オリヴィエ
逢びき/デヴィッド・リーン
ダイー・ケイの天国と地獄
荒野の決闘/フォード
黄金/ジョン・ヒューストン
悪魔の美しさ/クレール
踊る大紐育ジーン・ケリースタンリー・ドーネン
黄色いリボン/フォード
情婦マノンクルーゾー
第三の男/キャロル・リード

■1950年代
アニーよ銃をとれ
イヴの総て/ジョゼフ・マンキウイッツ
戦慄の七日間
巴里のアメリカ人/スタンリー・ドーネン
グレンミラー物語
シェーン/ジョージ・スティーヴンス
バンド・ワゴン/ヴィンセント・ミネリ
ローマの休日ウィリアム・ワイラー
悪魔のような女/クルーゾー
波止場/エリア・カザン
エデンの東/カザン
赤い風船
第七の封印/ベルイマン
情婦/ビリー・ワイルダー
魔術師/ベルイマン

■1960年代
甘い生活フェデリコ・フェリーニ
処女の泉/ベルイマン
太陽がいっぱいルネ・クレマンエストサイド物語/ロバート・ワイズ
アラビアのロレンスデヴィッド・リーン
8 1/2/フェリーニ
シェルブールの雨傘/ジャック・ドミー
戦争は終った/アラン・レネ
アルジェの戦い
バージニア・ウルフなんかこわくないマイク・ニコルズ
ロシュフォールの恋人たち/ドミー
冒険者たち/ロベール・アンリコ
素晴らしき戦争/リチャード・アッテンボロー

■1970年代
ジョニーは戦場へ行った/ドルトン・トランボ
叫びとささやき/ベルイマン
フェリーニのアマルコルドフェリーニ
タワーリング・インフェルノジョン・ギラーミン

■1980年代
ファニーとアレクサンデル/ベルイマン
アマデウスミロシュ・フォアマン

■1990年代以降
霧の中の風景
恋におちたシェークスピアジョン・マッデン