遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ナウズ・ザ・タイム/チャーリー・パーカー

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ナウズ・ザ・タイム/チャーリー・パーカー


曲目リスト
1.ザ・ソング・イズ・ユー
2.レアード・ベアード
3.キム(別テイク)
4.キム
5.コズミック・レイズ
6.コズミック・レイズ(別テイク)
7.チ・チ(別テイク)
8.チ・チ
9.チ・チ(別テイク)
10.チ・チ
11.アイ・リメンバー・ユー
12.ナウズ・ザ・タイム
13.コンファメイション


1.~6.  1952年12月30日、ニューヨークにて録音。
[パーソネル]
チャーリー・パーカー(as)、ハンク・ジョーンズ(p)、テディ・コティック(b)、マックス・ローチ(ds)

7.~13. 1953年7月30日、ニューヨークにて録音。
[パーソネル]
チャーリー・パーカー(as)、アル・ヘイグ(p)、パーシー・ヒース(b)、マックス・ローチ(ds)




13曲のうち、最も長い曲が3分17秒、短いものが2分37秒である。


これが録音された50年代初めは、まだLPは一般的に普及しておらず(1948年発明)、

レコードと言えば78回転のSP盤だった。

直径25センチの大盤レコードを1分間に78回転も回すのだから、

1枚の演奏時間は3分前後なのである。


だから、SPレコードで楽しめるクラシックは少なく、

SP盤は、ジャズやポップス音楽で真価を発揮するのである。


ジャズが「3分間の芸術」と呼ばれた所以である。


チャーリー・パーカーは、アルト・サックスのジャイアントで、

渡辺貞夫が神のように尊敬するプレーヤーである。

「バード」という愛称でも世に知られている。


モダン・ジャズは、バードの演奏形態「ビーバップ (Bebop)」から始まり、

それまでの時代のスィング・ジャズより、即興性の強い自由なものであった。


「ビーバップ (Bebop)」

マンネリ化したスウィング・ジャズに飽きた、あるいは、本来の即興演奏が好きなジャズメン(ジャズの演奏家)たちが、ライヴハウスや演奏主体の飲食店の閉店後に、ジャム・セッションをしていて、そこから発展し生まれたとされる。

最初に決まったテーマ部分を演奏した後、コード進行に沿った形でありながらも、自由な即興演奏(アドリブ)を順番に行う形式が主となる。基本的には、コード構成音や音階に忠実にアドリブ演奏しながらも、テーマのメロディーの原型をとどめないくらいディフォルメされた演奏となっていった。


このアルバムは、彼の最晩年のもので、

数年後の1955年に、バードは34歳で亡くなった。

彼は15歳でデビューして、麻薬と酒と病気の日々で、

家族の不幸もあって、晩年はボロボロであった。


しかし、このアルバムのバードは、バラードもアップテンポの曲も、

寸分の乱れもなく演奏している。

50年以上経って、今我々は、CDにより13曲を一気に、

天才の音楽性を余すことなく享受できる。



当時、SPで初めてバードのスリリングな演奏を聴いた人は、

回転数が間違っているのじゃないだろうかと、思ったかもしれない。



チャーリー・パーカーなしには生まれなかったことが、証明される。


「3分間の芸術」とは、バードに捧げられた言葉といってもいいと思う。


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第50位