遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

走って渡った明石海峡大橋

イメージ 1

走って渡った明石海峡大橋



明石海峡大橋

兵庫県神戸市垂水区淡路市

神戸市垂水区舞子と淡路島の津名郡淡路町を結ぶ、橋の長さ3911m、中央支間長1991m、主塔の高さ約300mの世界最長の吊り橋。夜間には、季節・時間などによって変化するライトアップが施され、真珠を連ねたように美しいことから“パールブリッジ”の愛称でも親しまれている。本州側では橋の高さ50mの位置に、回遊式の遊歩道「舞子海上プロムナード」が設けられており、屋根のない展望広場や海面を覗くことができる特殊なガラスの床があり、臨場感たっぷりに楽しめる。 


1998年4月5日に明石海峡大橋は開通した。

起工から実に12年を要した。

開通直前の3月に、真新しい大橋を利用したマラソン大会が開催された。

既に日常のランニングをやめていた当時の私は、10Kmの部にエントリーした。


4Kmの長さの橋を渡って、淡路島の高速道路を2Kmばかり走って、

また帰りに橋を渡るというのが10Kmの過程。


事前の練習をまったく行わず、コースは平坦だから楽勝だと思っていた。


ところが、走り出して1Km、高さ300メートルの主塔を超えると、

道は上り坂になってきた。

橋の中央まで、そこから1Kmのだらだらの上りが続く。これが堪えた。

まっすぐの道路で、行けども行けどもだらだらと上るというのは、ダメージが大きい。


画像で見ていただくと、さほど上っているように見えないのであるが、

実際は、いやらしい上り坂であった。

わたり始めたところから中央部まで、実に43メートルの高低差があるのである。

20階建てのビルを上るのと同じである。



玉子たっぷりのダシの効いた生地で、蛸を入れて「たこ焼き」器で

ボール状に焼いた食べ物を「明石焼き」と呼ぶ。蛸にちなんで命名されている。

明石の蛸は、関西では美味で有名。 高価だ。



また、明石鯛も美味で高価で有名だ。

高砂や この浦舟に 帆を上げて」で有名な、

おめでたい謡(うたい)として結婚式に欠かせない謡曲高砂」。

高砂の地は、明石から少し西方に位置する。

「明石鯛」と「高砂」、おめでたいことはこの辺りで用が足りる。




この明石海峡は、海水が川のように流れる海峡である。

鯛も蛸も、この海流に鍛えられて、美味しいのである。



東京タワー並みの高さ約300メートルの主塔は、

平行には立っていない、逆「ハ」の字状に立っている。

地球の重心に忠実に、垂直に長い支柱を、2Kmの間隔で立てると、

その2本の支柱は、平行にならないのである。

タワーの上の方と下の方の塔間の差は、9メートル余りある。

確かに地球は丸い。


ピアノ線を3万6千本捻って束ねることを繰り返した、

直径1メートルを超える繋ぎ目のない4073mのケーブル2本が、橋梁を支える。


私は、黒四ダムを見たときもそう思ったが、

人間はなんというものを造るのだろうか。



前を見るとだらだら坂、足元は粗い目のグレーチングを通して海面が見え足がすくむ。


穏やかに見える西のかなたに広がる鏡のような水面の瀬戸内海を、

「さんふらわぁ」号が往くのを見る。(画像の右が西になる。)

その風景を見ていたら、少し足が軽くなってきた。


私が橋を渡りきるころに、復路を有森裕子がニコニコとして帰ってきた。



大橋の下の鯛や蛸は、今も元気なのだろうかと、思う。