遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

砂の器 /野村芳太郎

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今年、墓碑銘にその名を刻んだ映画監督野村芳太郎

4月8日に85歳の生涯を終えられた。

主な作品群は以下のとおり。

砂の器 (1974)
八つ墓村 (1977)
八甲田山 (1977)
事件 (1978)
鬼畜 (1978)


で、代表作は「砂の器」である。

製作=松竹=橋本プロ 
1974年制作
143分

監督:野村芳太郎
脚本:橋本忍 山田洋次
原作:松本清張
撮影:川又昂
音楽監督:芥川也寸志
作曲・ピアノ演奏:菅野光亮

配役    
丹波哲郎
加藤剛
森田健作
加藤嘉
島田陽子
山口果林
笠智衆
春川ますみ
花沢徳衛
殿山泰司
加藤健
佐分利信
緒形拳
渥美清

松竹制作の渾身の作品である。

原作:松本清張、脚本:橋本忍山田洋次、音楽:芥川也寸志と、

押しも押されぬ横綱級が顔を並べる。

配役のラインアップは、上記のとおりの豪華さ。

上の4人を中心に、ストーリーは展開する。


このミステリは、犯人当て仕立てではない。

犯人は、なぜ犯行に及んだかが、メインテーマなのである。


やるせなく重い重いテーマである。

その、重い深いテーマを、警視庁捜査会議室で、

事件の事実経過を説明する刑事役の丹波哲郎が、

朗々と語るのである。


丹波哲郎は、いい気なおじいちゃんになったが、

この映画のシリアスな刑事役は、彼の代表作でもある。




そしてそして、それに続く、

日本の四季を、遍路を続ける親子の姿。

日本の自然美をあまつなく伝える、カメラの素晴らしさ。

そしてそのバックに流れる、菅野光亮作曲の交響曲『宿命』。


この、重厚な音楽をバックに、日本の四季を巡る親子を描いたシーンの美しさ、

悲しさは、他の追随を許さない。


私達は、なんと美しい悲しい国に生まれてきたのだろうと思う。

撮影監督の川又昂の力量に、舌を巻くのである。



私は、松本清張の原作は読んでいない。

この映画を観れば、その必要はないかもしれない。


親子の遍路を続けるシーンは、原作にないであろう。

少なくとも、日本の自然とバックに流れる音楽は、

原作の読み手には想像できないと思う。


映画を観るしかないのである。


野村芳太郎は、この素晴らしい作品を残して、

早春に逝った、慎んでご冥福をお祈りする。