冬の唄ではなかろうが、どうしても冬をイメージさせるのが、
「江差追分」である。
かもめの鳴く音にふと目を覚まし
あれが蝦夷地の山かいな
これが江差追分の本唄の歌詞である。
この短かい詞が、3分の長さで唄われる。
300年前、北陸地方の下級武士や農家の次男三男たちは家督も継げず、
暮らしもままならない状況の中、蝦夷地での大成を夢にみて北前船に乗り込み、
長い航海の末にある朝かもめの鳴く声に目を覚ますと、
そこには夢にみた蝦夷地の山が見え、期待と不安に胸膨らませながらも、
故郷の親兄弟や恋人との別れて来た心情を唄ったものである。
信州は中山道の軽井沢付近で馬子や宿場の飯盛り女達がうたっていた馬子唄が、
旅人やゴゼによって北国街道を通り、越後に伝えられ、
山の唄が海の調べに変わって越後追分となり、
やがて北前船の船頭や船子達がこの唄を、
当時ニシン漁で繁栄期にあった蝦夷地唯一の港、江差に運んだようである。
毎年9月の「江差追分全国大会」は、今年で43回の開催を数え
予選2日間、本選1日の都合3日間、全国から集まった老若男女が、
この一曲を、この一曲だけを延々と披露する。
さわりはここで↓ (音量注意!)
http://www.k-kazumi.com/
歌うは日本のマヘリア・ジャクソン 木村香澄(画像はご本人)。
平成3年第29回江差追分全国大会の優勝者である。
日本のスピリチュアルである。
日本一難しい唄である。
しかし、もっとも美しい唄である。