遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

卒業/マイク・ニコルズ

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卒業 1967年製作 
 
■監督 マイク・ニコルズ
■原作 チャールズ・ウェッブ
■音楽 ポール・サイモン
■出演 ダスティン・ホフマンキャサリン・ロスアン・バンクロフト


この作品で、ダスティン・ホフマンは、映画デビューした。


私は、リバイバルで映画館で始めて観た。


しかし、ラストシーンは映画を観るまでに知っていたし、

サイモン&ガーファンクルサウンド・トラック盤は大ヒットしていたので、

音楽も隅から隅まで聞き馴染んでいた作品であった。

しかし、後の予備知識はまったく持たないで、映画館へ足を運んだ。


サイモン&ガーファンクルは、映画公開と同時に「卒業」のテーマ

サウンド・オブ・サイレンス」で日本に登場していた。

ほかに映画で使われた「スカボロー・フェア」「ミセス・ロビンソン

「4月になれば彼女は」などが、ヒットした。


冒頭のタイトルバック。

大学を卒業して故郷に帰ってきたD・ホフマン演じるベンジャミンが、

到着した空港の動く歩道に乗っかている映像のバックに、

静かに「サウンド・オブ・サイレンス」が流れてきて、

この物語が始まる。

このシーンのS&Gの歌と、ベンジャミンの何とも無表情な様子が、

淡々としていて穏やかなはずなのに、何故か私はワクワクして、鮮烈な印象を覚えた。

第1ラウンドですでに、マイク・ニコルズにKOパンチを食らったようであった。



パティ・デュークヘレン・ケラーを演じた「奇跡の人」(監督:アーサー・ペン

で、三重苦のヘレンを教えたサリバン先生役で、アカデミー主演女優賞を受賞したのが、

アン・バンクロフトである。


私は「卒業」以前に「奇跡の人」で、アン・バンクロフトに出会っていた。

奇跡の人とはヘレンケラーのことだと思っていた私の間違いを、修正してくれたのは、

淀川長治であった。

奇跡の人とは、三重苦のヘレンに言葉を教えた、アニー・サリバンのことだったのである。

サリバンを演じたアンは、実直な家庭教師役を激しく演じ、私はその演技に感動した。


その、アン・バンクロフトが「卒業」で、ロビンソン婦人を演じたのであった。

この映画の有名なポスター(上記の画像)の、左足の主は、ミセス・ロビンソン

つまり、アンの足なのであった。


あの奇跡の人を演じたアンが、退廃的な有閑マダムを、これまた見事に演じて、

私は第2ラウンドにも、必殺パンチを食らってしまったのであった。



もしこの映画に、ほかの音楽が使われていたら、

ここまで深いインパクトがあっただろうか。

サイモン&ガーファンクルの爽やかな歌声が、

若いキャサリン・ロスとD・ホフマンの心の動きと見事にマッチして、

印象的な作品に仕立て上げたといえるであろう。


そして、「卒業」と「俺たちに明日はない」の

世にも有名なラストシーンで、

アメリカン・ニューシネマは、産声を上げたのであった。



キネマ旬報「オールタイムベスト・ベスト100」外国映画編(1999年調査)
第51位

この映画の採点=☆☆☆★★★
双葉十三郎のぼくの採点表より ☆=20点 ★=5点 但し☆☆☆☆★★以上はない)

私の採点=☆☆☆☆★