遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

あの頃ペニー・レインと/キャメロン・クロウ

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日本公開 2001年3月17日
上映時間 122分


「2000年代を代表する映画25本」リストから、レンタルDVDでランダムに選んだ「シティ・オブ・ゴッド」「ドニー・ダーコ」、そして今回ご紹介の「あの頃ペニー・レインと」(2000)は、偶然にもどの作品も少年が主人公だった。名付けて少年3部作とする。

あの頃ペニー・レインと」の主人公のウィリアム(パトリック・フュジット)は、大学教授である母親(「ファーゴ」のオスカー女優フランシスマクドーマンド)から、何がなんでも弁護士にさせるわよ!という教育方針で厳しく育てられてきた。
その厳しい母に、サイモンとガーファンクルのアルバムをコケにされスチュワーデスになることを反対されたウィリアムの姉は、弟にロックのLPレコードを置き土産にして「絶対スッチーになってやる!」と、家を出て行く。

そんな母親と姉の恩恵で、飛び級でハイスクールを卒業したウィリアムは、15歳であの「ローリング・ストーン」誌の記者に抜擢され、人気上昇中のバンド「スティルウォーター」のツアーに密着取材する仕事を任される。
ここまでの設定で、映画ファンやロックファンは嬉しくなってくるはず。

ウィリアムは、楽屋口でスティルウォーターのメンバーに身分を明かして取材をするも相手にされない。ちょうど楽屋口にいた、バンドのグルーピーのペニー・レイン(ケイト・ハドソン)と知り合い、彼女の口利きでバンドの密着取材を許されることになる。
ここから、ロードムービーのような、ウィリアムとペニー・レインとロック・バンドの物語が展開していく。時は1973年、私は20歳。

原稿の執筆に行き詰まったウィリアムを励ましてくれる大物記者に、今年の2月に若くして亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマン(「カポーティ」のオスカー主演男優)が起用され、渋い脇役ぶりを見せてくれる。


監督のキャメロン・クロウ(この作品でオスカーの脚本賞受賞)は、自身の15歳の時に「ローリング・ストーン」誌の記者として、レッド・ツェッペリンなどにインタビューをして記事を書いていたという経歴の持ち主で、映画のウィリアムは彼の思い出なのだという。

ヒット・パレードドキュメントを避けるためか、メジャーなヒット曲が多く流れるわけではなかったが、映画の中では、エルトン・ジョンサイモン&ガーファンクルザ・フー、ロッド・スチュアート、ビーチ・ボーイズレッド・ツェッペリントッド・ラングレンオールマン・ブラザーズ・バンドなどの楽曲が流れ、少なくともあの時代の風を感じることができる。

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私はウィリアムや世の男性諸君ほどには、ケイト・ハドソンが演じるペニー・レインに魅力を感じなかった。
むしろ、ペニー・レイン(まだ17歳だったが)やバンドのメンバーや母や姉に可愛がられて大人になっていくウィリアムの、ガツガツしていない生成りの麻のような素朴な魅力の方が勝っていた。遠い昔の自分を見るようでとても懐かしかった。

今回鑑賞したゼロ年代の少年3部作の中では、いちばんのお気に入り作品だった。
どこかノスタルジックな感じがするのは、原題とはかい離している邦題「あの頃ペニー・レインと」というタイトルのせいでもある。