遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

史上最大の詐欺事件のドキュメンタリー『バーナード・マドフ: ウォール街の詐欺師』

バーナード・マドフ: ウォール街の詐欺師』(原題 MADOFF The Monster of Wall Street)というドキュメンタリーを見ました。これは、  2022年にネットフリックスで公開された全4話のドキュメンタリー番組です。不覚にも私はよく知らなかった事件でした。

バーナード・マドフが起こした詐欺事件についてチャットGPTに訊いてみました。
バーナード・マドフは、2008年に発覚した巨額の投資詐欺事件の主犯でした。彼は、自身が経営する投資ファンドを通じて、顧客から約650億ドル以上を不正に集めていました。
マドフは、新しい投資家からのお金を使って、古い投資家たちに高い利回りを示す偽の報告書を提出していました。このようにして、彼は多くの人々を騙し、巨額の利益を上げていました。
しかし、2008年に世界的な金融危機が発生すると、投資家たちが預けたお金を引き出すことを求めたため、マドフの不正が露呈しました。当局による調査の結果、マドフは悪質な投資詐欺を行っていたことが明らかになり、2009年に逮捕されました。
その後、マドフは有罪を認め、懲役150年の判決を受けました。この事件は、金融業界において信頼を失った事件の一つとして、世界中で大きな衝撃を与えました。》

被害額は650億ドル以上で、1ドル100円で換算しても6兆5千億円の詐欺ですから、とてつもない巨額資金をマドフは集めていました。

投資家たちは、失敗しないマドフのファンドに莫大な資金を投入していましたが、長年リターンもないまま預けっぱなしにしていました。「架空のリターン(含み益)」は、季節ごとにマドフのファンドから報告がありましたが、それは実態を表すものではありませんでした。

集めた金を、実際には投資せずに「架空ファンドとして運用」していただけの、張りぼての偽ファンドだったわけです。マドフは、それだけの信頼の厚い、ウォール街で名をはせた人物だったわけで、「ナスダック」の設立にかかわるなど合法的な証券会社のCEOでした。しかしそのスマートな顔の裏にある隠された顔は、「悪魔」の容貌でした。

彼はユダヤ人でしたが、被害者の多くはユダヤ人の富裕層でしたから、強制収容所でナチの手下となりユダヤ人を迫害した「カポー」を想起させました。

ユダヤ人被害者は、金融界のユダヤ人の英雄、つまり同胞に騙されたのでした。被害者たちはこのドキュメンタリーで、財産と未来を失った無念さを、遠くを見るような顔つきで語っていました。

マドフの証券会社は、NYのリップスティック・ビルにありました。ドキュメンタリーは、そのオフィスを忠実に再現していたようです。

19階フロアーが、マドフの表の顔の証券会社のモダンなオフィスで、彼の息子2人が父親の片腕となって働いていました。

2階下の17階フロアーが偽ファンドを扱うオフィスで、関係者以外は入れず、マドフの息子たちでさえ足を踏み入れられないフロアでした。そこは、19階とはまるで別世界の、ダンボールの箱が所狭しと並べられた黎明期のコンピュータルームと鉛筆舐め舐めのアナログ時代の様相を呈したまさにブラックボックスと化したオフィスでした。

マドフは、あろうことか、17階の秘密を知った息子たちに通報されて逮捕されました。SEC(米国証券取引委員会)さえ、マドフのことを信用していて、告発を続けていた勇気ある第三者(本人が本作にも登場します)を無視し続けました。

この史上最大の詐欺事件は、金融工学が幅を利かした時代に、もっとも原始的な「オレオレ詐欺」的な手法が成立した一つの事件でしたが、その規模と影響の大きさは甚大で、豊かだけど同胞に対しては無防備で無垢な被害者につけこんだものでありました。

本作は、例によって、事件の被害者たちやマドフの近くにいた秘書などの関係者やFBI捜査官や第三者の通報者たちに語らせることによって、また忠実な再現シーンを構築することによって、ニュースやチャットGPTでは伝わらない事件の真相を浮かび上がらせていました。