遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

内部留保は十分積み上がった、次は分配だ!分配なくして成長なし!

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日本の企業の内部留保」の合計額は2019年時点で484兆円(対前年比2%増)ですから、毎年2%ずつ増加していると2021年では500兆円を超えます
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210901-OYT1T50166/

内部留保500兆の規模の大きさ比較のために言いますと、日本のGDPは2021年の最新値で5兆3千8百億ドル(約600兆円)で、日本の国家予算が約100兆円です。
https://eleminist.com/article/1679

企業の内部留保」500兆円というのは、年度ごとの利益剰余金を企業が積んできたいままでの累積額のことです。

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企業は、毎年収益から給与を払い税金を払い最終的な当期純利益で決算します。
この当期純利益から「株主配当」して残ったものが「利益剰余金」となります。
企業とすれば、「利益剰余金」が最後の最後に残った利益でこれが内部留保の概念となり通常は毎年額が膨らんでいきます。

もともとの「資本金」と「内部留保(利益剰余金の累積額)」が「自己資本」となります。

政治家の討論会で「企業は貯め込んでいる内部留保を取り崩して吐き出すべきなのだ」と主張する人をしばしば目にしますが、一般市民なら「それはどういう意味?」ということになります。討論に参加している人たちは、訳知り顔でうなずいたり無視したりしていますが、分かっているのでしょうか。

内部留保を取り崩す」ケースとはどういう時かというと、それは、企業が経営不振に陥ったり赤字になった場合です。

毎年の「当期純利益」が細ってきて約束通りの株式配当ができないときは内部留保を取り崩して当期純利益を支えたり、あるいは債務超過を防ぐために内部留保を取り崩して倒産危機を回避します。

内部留保は、現金としていつでも使えるというものではなく、企業の余裕金(リスクに対応できる会計上の価値)として積み立てられた性質のものだという概念がぴったりします。

積み上げた内部留保に余裕があれば、従業員の給与を上げたり設備投資を活発にして利益が減っても安心だと言え、そしてなんといっても景気循環に貢献できるのですが、今の雇われ経営者はそれをやらないから問題なのです。

野口悠紀雄氏が「日本の企業が目覚ましい技術革新もなしに利益を上げられ、株価が上がったのは、日本の労働者を貧しくしたからだ。これこそが、アベノミクスの本質だ」と言ったそうですが、内部留保がここまで積み上げられたのは私たちの賃金が抑えられたからだという結論でいいかと思います。

加えて、法人税もずっと少ないままですし、企業の儲けは賃金や税金に流れないで内部留保としてずっと溜め込まれているのです。

賃金が上がらないので、個人の所得税も上がっていかないし、社会保険料(個人負担と企業負担あり)の徴収も増えていかないので、100兆円の国家予算の多くを税金に頼ることができない財政問題が解決できないままなのです。

また、企業は人件費(賃金・社会保険料の企業負担分など)を抑えるために非正規の職員を増やし続けていて、人材派遣会社に支払う非正規職員の給与は中抜きされて人材派遣会社の内部留保に化けているという悲しい構図が長年続いています。

財務省事務次官自民党総裁選の公約を「バラマキ合戦」だと批判したそうだが、野党の公約にも同じイチャモンをつけたいのではないでしょうか。

しかし、内部留保がたっぷりある企業については何らかの課税をかけるべきで、それが「内部留保を吐き出す」ことに近い政策だと思います。また、企業税制にはさまざまな優遇制度もありその優遇についても濃淡をつけるべきだと思います。

具体的にどうするのかは難しいのですが、
内部留保が充実している企業には
法人税率を上げる
内部留保額自体に課税(500兆円×1%で年額5兆円)する
優遇税制の税率を廃止もしくは優遇税率・額を下げる
従業員の賃金上昇が利益と見合うものでなければ課税
従業員の男女比率の改善がなければ課税
障がいのある従業者の雇用率を守らなければ課税
非正規従業員が一定割合を超えると課税

みたいなことを素人として提案します。

グローバルなネット業者や邦人商社にも課税をするべきでしょう。

ということで、立憲民主党の公約にもありますが、企業の内部留保は十分積み上がったので、法人税率を上げて優遇税制を縮小して、従業員の賃金(最低賃金)を上げて個人の所得税率を下げて、さらに消費税を下げてそれに代わる内部留保にかかる新たな税制を確立していただきたいと思います。