いまは亡きスティーグ・ラーソンの小説で、世界的なベストセラーとなった「ミレニアム」シリーズ(3部作)を引き継いだスウェーデンの作家ダヴィド・ラーゲルクランツの原作の映画化作品だったようです。
娯楽性に富んだスリリングな楽しい映画でした。主人公リスベットの駆るバイクがカワサキ製からドゥカティに変わってしまいましたが、2時間に満たない作品ですし、テレビやゲームに飽きたら涼しい部屋でお楽しみください。冬のスウェーデンが舞台の夏向きの作品です。
「ミレニアム」シリーズは1から3までをスティーグ・ラーソンが遺し、その後ダヴィド・ラーゲルクランツが『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』、『ミレニアム5 復讐の炎を吐く女』、『ミレニアム6 死すべき女』を書き上げたようです。
スティーグ・ラーソンが亡くなってミレニアムシリーズは私のなかでは3作で終わっていましたが、ダヴィド・ラーゲルクランツがその後のリスベットとミカエルの調査記録物語を紡いでいるようです。
ということで、私の過去記事から「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」の読書記事をここに再掲載します。小説もすこぶる楽しい出来であります。
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上・下)
スティーグ・ラーソン (ハヤカワ・ミステリ文庫)
月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、ある大物実業家の違法行為を暴く記事を発表した。
だがその記事が名誉毀損にあたるとして有罪になり、彼は『ミレニアム』から離れた。
そんな折り、大企業グループの前会長ヘンリックから依頼を受ける。およそ40年前、彼の一族が住む孤島で兄の孫娘ハリエットが失踪した事件を調査してほしいというのだ。
その調査結果次第で、名誉棄損で敗訴した例の大物実業家を破滅させる証拠を渡すという条件を提示されたのだった。ミカエルは受諾し、困難な調査を開始する。
「ドラゴン・タトゥーの女」の字面だけのイメージは犯罪者だったのだが、ドラゴン・タトゥーの女ことリスベット・サランデルは犯罪捜査に取り組む、カワサキのバイクを駆る超腕利きの調査員であった。
ミステリーはさまざまなジャンルがあるが、本作「ミレニアム1」は、「犯人は誰だ」がテーマの、犯人探しの本格推理小説にジャンル分けされよう。
ヘンリックという前会長から依頼されて、スウェーデンの同族大企業グループの秘密を探るのが、経済雑誌発行責任者のミカエル。
地道な捜査活動だけを淡々と描写するだけでは退屈なので、作者スティーグ・ラーソンは、ミカエルの周辺に複数の女性を配置して、物語に楽しい変化をつけてくれる。
その女性陣のひとりが、ドラゴン・タトゥーを背負った若きリスベットで、最終的には、40歳過ぎの主人公ミカエルと、「謎解き犯人探し」を成し遂げるのである。
本流となる、迷宮入りの事件捜査のほかに、リスベットの私生活を描いたストーリの支流も、すこぶる面白い。
また、本流の事件が解決した後も、さらにページ数が残されていて、そこから、ミカエルは再びリスベットと組んで、名誉毀損で敗訴したある大物実業家の違法行為を暴くために、全身全霊を傾ける。
エンターテイメント・ラインが何本も通っていて、その一本一本に手抜きがなく、さすがは全世界で楽しまれたベスト・セラー、徹頭徹尾楽しませてくれるのである。
登場人物は多いのだが、主要人物は限られていて、その一人一人の人物造形が、単調でなく浅くもなく荒唐無稽でもなく、よく考え抜かれていて楽しい。
リスベットとミカエル、彼らふたりの活躍譚は、当然に次回作にも引き継がれるのである。