遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

また東京オリパラの不祥事/「豚演出」で開会式ディレクターが辞任

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国会で答弁をしていた東北新社の中島社長を見ていて、その几帳面さに違和感を感じていた。

人前で話すことに慣れていないというか、「頼りない」という印象も受けるお方だったが、新社長として慣れない場所で真摯な態度だったのが逆に好感を持たれている。それもそのはずで、この方は元CMディレクターだったそうなのだ。
《(東北新社の)中島社長はCMディレクターとして有名な人物だ。代表作にカンヌ広告祭グランプリを受賞した日清食品「hungry?」》
と朝日デジタルにあった。あああのCMかと覚えている。ユーモラスで印象に残っている。

一方、ソフトバンクの白い犬を中心とした家族「白戸家」のディレクターをしてたのが佐々木宏。「東京2020 開会式・閉会式 4式典総合プランニングチーム」で野村萬斎が辞めた後のチーフディレクターを務めていた。しかし、このたびの渡辺直美を豚に見立てての演出企画発言で批判を浴び役職を辞任した。

容姿のことをネタにするのは、いまやお笑い芸人でもあまりやらない腐れ芸だというのに、このクリエーターはどこを歩いているのだろうか。

日本では、可愛くてペットとしての人気さえ出てきたブタ君だが、海外では「豚」というのがじつにセンシティブな動物で、豚を忌み嫌って食べない宗派があるし、ユダヤ教の人たちは(豚を食べないのに)他の宗派からは豚と差別されていた歴史がある。今もその意識は残っているだろう。

ヨーロッパのどこだったか忘れたが、カソリック教会を案内してくれた日本人ガイドが教えてくれたのだが、その建物を支える柱と床の間を支えている動物が豚だった。

「これはユダヤ人を表していてここに差別の歴史を見ることができる」と教えてくれたのを強烈に覚えている。

冒頭の画像にあるように、奈良や京都でよく目にする四天王や仁王に踏まれている邪鬼は、異教徒というより心に住む邪悪な鬼の概念なのだろう。しかし、教会の柱に挟まれている豚は、強烈な差別思想表現でショッキングなものだった。

佐々木宏は、世界に向けてのセレモニーで本気で「オリンピッグ」などと豚演出をする気だったのだろうか。あまりにも勉強不足だと思う。公共の場で不特定多数を相手にする表現者としては、あまりにも無知だと言わざるを得ない。

白戸家」での演出ならスポンサーチェックで採用されないと思うので笑いごとで済むかもしれないが、オリパラの開会式でやってしまうと取り返しがつかないことになる。幸いにもスタッフのチェックがかかって、事前にこのことが判って彼が辞職することになって、最悪のことは避けられた気がする。

東京オリパラの開会式や閉会式は開かれないことが決まっていて、お遊び・おふざけLINEが漏れてしまったということなのかな、まさか。

それにしても、どこまでも呪われている東京オリパラ。仁王さんにでも踏まれているのだろうか。

 

ウィキペディアより《佐々木宏の差別的演出の提案》
東京2020 開会式・閉会式 4式典総合プランニングチームの一員だった2020年3月5日、メンバーのグループLINEに「ブヒー ブヒー/(宇宙人家族がふりかえると、宇宙人家族が飼っている、ブタ=オリンピッグが、オリの中で興奮している。)」「空から降り立つ、オリンピッグ=渡辺直美さん」など、渡辺直美をブタとして演じさせるプランを2020年東京オリンピック開会式案を送信。女性メンバーからは「容姿のことをその様に例えるのが気分よくないです/女性目線かもしれませんが、理解できません」、男性メンバーからも「眩暈がするほどヤバい」と反対されて案を撤回したことが2021年3月に週刊文春により報じられた。
報道を受けて3月18日未明、A4用紙4枚に及ぶ謝罪文を組織委員会を通じて報道各社に公表した。「MIKIKOさんを入れた10名以上のグループで、ざっくばらんにやりとりした中で、私が調子に乗って出したアイデアです」「MIKIKOさんを前に、アイデアを出し合い、を、何度かやりました」「MIKIKOさんのプレゼンされた企画書の絵を使い、縮小したりしながらIOCに提案しました」(すべて原文ママ)と追記を混えて事の経過を釈明し、2020年東京オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会会長の橋本聖子に辞意を伝えた。》