遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

グレン・グールドが演奏するバッハの「ゴールドベルク変奏曲」

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きょうご紹介するのは、ピアニストのグレン・グールドが演奏するバッハの「ゴールドベルク変奏曲」。

グールドは、ゴールドベルク変奏曲を2度録音して世に出していて、それは1955年6月と1981年4月・5月の2度の録音である。

私の所有CDは、後者の彼の晩年の、といっても49歳のときの演奏記録である。

グールドのCDは、モーツァルトピアノソナタ保有しているが、テクニックのことはよく判らないが(素晴らしいのだと思う)、そのテンポがものすごく速かったり遅かったりしていて、他のプレーヤーとは別物。
モーツァルトサリエリを翻弄したごとく、グールドはモーツァルトの作品を弄んでいるのか、冒涜しているのかもしれない。

一方、グールドの演奏するバッハのこの曲は、実に敬虔な演奏態度であり、グールドのバッハ好きがよく理解できる。
派手さはないが、静謐な調べは、場所や時を選ばない全天候型の名品である。

全32曲、数十秒から6分まで、曲の長さはまちまち、みな同じように聞こえる方もおられようが、単調で退屈だと思われる方もおられようが、「ながら聴き」でもよろしいかと思う。
エンドレスでこの曲を流しておいても、どこからもクレームは出まい。この作品集のどこをどう切り取っても、みずみずしく新鮮に感じられる。
これで眠りに落ち、これで目覚めても罰当たりではない。

バッハとグールド、時空を超えたヴィルトゥオーソ(演奏の格別な技巧や能力によって達人の域に達した、超一流の演奏家)の競演を楽しまれたい。

(下の動画は、1981年のグールドの「ゴールドベルク変奏曲」録音時のもの。小さな椅子に腰かけて弾く変人グールドの変則スタイルも見もの)

www.youtube.com

ゴールドベルク変奏曲

ヨハン・ゼバスティアン・バッハによるアリアと様々の変奏曲からなる2段の手鍵盤のチェンバロのための練習曲 (BWV 988)。全4巻からなる「クラヴィーア練習曲集」の第4巻で、1742年に出版された。

「アリアと種々の変奏」と題されているが、バッハが音楽を手ほどきしたゴルトベルクが不眠症に悩むカイザーリンク伯爵のためにこの曲を演奏したという逸話から「ゴルトベルク変奏曲」の俗称で知られている。

もともとチェンバロの曲であったためピアノが主流となった時代から20世紀初頭まで演奏されることは少なかった。20世紀後半になって若手の気鋭ピアニストであったグレン・グールドがデビューアルバムにこの曲を選択、レコード会社の反対を振り切ってピアノ演奏の録音盤を1955年に発売し、世界的なセンセーションとともに一躍著名な曲となった。