遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

飢餓海峡/水上勉

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飢餓海峡 (上・下巻) 新潮文庫
水上 勉 (著)  価格: 各¥620 (税込)


昭和22年9月20日、函館港を出発した青函連絡船

層雲丸が転覆する。

死者532名という大惨事となったが、収容した死体は

乗客名簿より2名分多かった。


この小説のプロローグである。



キネマ旬報「オールタイムベスト・ベスト100」日本映画編

七人の侍    黒澤明
浮雲      成瀬巳喜男
飢餓海峡    内田吐夢
東京物語    小津安二郎


上記は、キネマ旬報社が映画評論家、映画製作スタッフたちを対象に行った

アンケート調査をもとに選んだ日本映画歴代ベスト100のうちの、

ベスト3である。


名作「東京物語」と並んで堂々の3位が、「飢餓海峡」である。

飢餓海峡 1965 東映東京
 
 監督 内田吐夢 原作 水上勉
 脚本 鈴木尚之 撮影 仲沢半次郎 音楽 富田勲
 出演 三国連太郎左幸子高倉健伴淳三郎/三井弘次
 加藤嘉沢村貞子/藤田進/風見章子


私はこの映画は、いまだに観ていない。

三国連太郎左幸子の代表作であるとともに、

内田吐夢(とむ)監督の打ち建てた金字塔でもある。



映画は観ていないが、水上勉の原作は遥か昔に読んだ。

今のように上下巻に分かれていない、分厚い文庫であった。


京都の僻村に生まれ、17歳で北海道に渡り、貧困のどん底時代に、

下北半島、恐山のふもとの寒村で生まれ、親を養うために身を売る薄倖の女と出会った、

男の生涯を描いた、社会派推理小説である。


貧しい時代の、悲しい男と女の、やるせない、

しかし、心を揺さぶる感動の大河小説である。



私は、松本清張の「砂の器」は、未読だが、

映画は観ている。

原作:松本清張
監督:野村芳太郎
脚本:橋本忍 山田洋次
音楽:芥川也寸志

なんというグレイトな組み合わせ。


水上勉内田吐夢の「飢餓海峡」は、

松本清張野村芳太郎の「砂の器」と双璧の、戦後の大河ロマンである。


やるせないが、しっかり生きなければと、4巨頭に勇気付けられる。