遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

法律事務所/ジョン・グリシャム

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法律事務所〈上・下〉 小学館文庫
ジョン グリシャム (著)、 白石 朗 (翻訳) 価格: ¥1000 (税込)


NHKで放映された海外ドキュメンタリー(製作はアメリカ)で、
被告の少年の無実を立証する、弁護士を追いかけていた。

この弁護士が、強くて・正義感があり、カッコよかった。


出演人物は、ドキュメンタリーだから総て本物。

被害者:白人老夫婦、
被告:黒人少年、やんちゃな感じはしない、容疑は強盗+傷害だったか。
証人の警察官:黒人、マッチョ若しくは肥満体型。
       少年に暴力で、自白を強要させた疑いあり。

検事:白人女子、ローレン・バコール若しくはシャーロット・ランプリング系の
   頭の切れそうな検事
裁判官:ウォルター・マッソー系の好々爺
弁護士:白人男子、リチャード・ドレイファス若しくはロビン・ウィリアムズ系の
    40歳代で少しおなかが出始めたが、ばりばりの働き盛り。

カメラは法廷に入り、弁護士が、ロビン・ウィリアムズの如く、
証人の自白を強要させたと思しき警官を追い詰めていく下りは、
圧巻であった。

繰り返すが、本当の裁判の記録だから、再現VTRのような柔なものではない。

核心を突く尋問になると、
バコール検事が、
「裁判長!」と、間髪を入れず異議を申し立てる。

しかし、弁護士は少年の無実を勝ち取り、
その後、同じ年恰好の真犯人が逮捕される
という結末を迎える。

暗がりでの犯行で、被害者は、犯人は黒人の少年だということしか認識しておらず、
たまたま近くに居た、母親に買い物を頼まれた少年が、
件の警官に暴行を受けて、自白を強要され犯人に仕立てられたというのが
真実であった。

あってはならない、恐ろしい「濡れ衣」であった。

例の、OJシンプソンの裁判もTV放映されたお国柄だから、
法廷にカメラが入ることには驚かないが、

法廷内の人間ドラマは実に面白い。



ジョン・グリシャムは、元弁護士。

現役時代は、刑事事件は扱っていなかったと記憶するので、
華々しい法廷でのパフォーマンスの機会はなかったであろう。

彼の出世作「法律事務所」には、息詰まるような法廷場面はない。

おんぼろ中古の「(確か)マツダ」に乗る、まだ貧しい新進弁護士が主人公の、

正義の記録である。

映画では、トム・クルーズが好演した。(ホリー・ハンターもよかった。)

本も映画も、どちらも、大変大変楽しめた。

弁護士に限らず、人間の正義感とは、

つまり、人間らしさとは何ぞやと、

グリシャムは自己の作品で、絶えず問いかけてくれる。


グリシャムものは、

この「法律事務所」(私は新潮文庫で読んだ)と、

依頼人」(映画ではスーザン・サランドンが好演、イイ!)が、

活字媒体も・映画も両方、私の大のお気に入りである。

他の作品も、はずれはない。

多作であるが、どれでも・いつでも、安心して、読まれたい。