私がレコード店でアルバイトをしていた20歳の頃、
シンガーズ・アンリミテッドはデビューした、
女1人+男3人のジャズボーカルグループである。
デビュー・アルバムは「イン・テューン」。
これは、オスカー・ピーターソン(p)トリオの伴奏をバックに歌っている。
なんとも贅沢な伴奏者ではある。
紅一点のボニー・ハーマン以外は、
男性ジャズコーラスグループのハイ・ローズの中心メンバーだったので、
純粋なデビューではなく、しかし、実力はお墨付きといったところであった。
オスカー・ピーターソンが伴奏したって、何の違和感もない。
ベテランおじさん3人に加わった女声ボーカル、ボニー・ハーマン。
彼女が、おじさん達3人を凌駕する歌のうまさである。
「ア・カペラ」というタイトルどおり、まったくの無伴奏で、
多重録音を駆使し、お馴染みのポピュラー曲をジャズアルバムに物している。
ジョン・コルトレーンは、「サウンド・オブ・ミュージック」の、
「マイ・フェイバリット・シングス」がお得意ナンバーだし、
マイルス・デイビスは、シャンソンの「枯葉」を、
枯れたトーンのトランペットでしみじみ歌い上げる。
ミュージカルナンバーであろうが、シャンソンであろうが、
ジャズメンが演奏すれば、それはジャズ。
ビートルズ・ナンバーも、然りである。
ジャズボーカルのテイストは失わず、ポピュラーを歌う。
このアルバムがその代表選手である。
そして、これこそが、ア・カペラの真髄である。
収録曲
1.青春の光と影
2.夜のロンドン
3.ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア
4.ララバイ
5.ミッシェル
6.フール・オン・ザ・ヒル
7.エミリー
8.シンス・ユー・アスクト
9.もう望めない
10.トライ・トゥ・リメンバー