遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

グルーヴィー/レッド・ガーランド

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グルーヴィー   レッド・ガーランド・トリオ


曲目リスト
1. Cジャム・ブルース
2. ゴーン・アゲイン
3. ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン?
4. 柳よ泣いておくれ
5. ホワット・キャン・アイ・セイ・ディア
6. ヘイ・ナウ

録音日 1957年5月24日、8月9日


ジャズの歴史に名を残すリズムセクションが、3チームある。


オール・アメリカン・リズム・セクションは、

結成初期のカウント・ベイシー・オーケストラ(オールド・ベイシー時代)の

リズムセクションであり、ジャズ界最高のリズムセクションとして名高い。

オールド・ベイシー時代とは1930年代の後半で、

カウント・ベイシー (Pf)、フレディ・グリーン (Gt)、

ウォルター・ペイジ (B) ジョー・ジョーンズ (Dr)の4人が、

正に「不世出のリズムセクション」であった


50年代には、ザ・リズム・セクションが、登場した。

マイルス・デイビスがプレスティッジで「in」で韻を踏んだアルバムを、

この世に出した時の、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、


フィリーは、オール・アメリカン・リズム・セクションの、

大ジョー・ジョーンズと区別するために、

出身地のフィラデルフィアのジョー・ジョーンズと命名した、


そして3チーム目が、60年代に登場。

ジョン・コルトレーンの黄金のカルテットの、

マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)




今日の1枚は、ザ・リズムセクションのうち


アート・テイラーが加わって完成させたアルバム「グルーヴィー」である。


ここにはジャズのエッセンスが総て完備されており、

ジャズとは何ぞやということが「グルーヴィー」1枚で分るのである。


ファンキーで楽しいことこの上ない「1. Cジャム・ブルース 」

しっとりと落ち着いた大人のバラード「2. ゴーン・アゲイン」「4. 柳よ泣いておくれ」

どこをどう切っても誰がどこで聴いても、これはジャズですというナンバー

「5. ホワット・キャン・アイ・セイ・ディア」と「6. ヘイ・ナウ 」

そして、リズミカルなハード・バップナンバー「3. ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン?」。


隅から隅まで、楽しくて切なくて、幸せな気分になれるアルバムなのである。


いつも黒子に徹している伴奏の名人で、縁の下の力持ちのレッド・ガーランド

ちょいとスポットライトを浴びると、しわがれ声のボスから自由になると、

こういう名作をドカーンとじゃなく、サラッと残してしまうのである。



おととい、雨の中傘をさしてケータイで大きな声で話しながら、

私を追い抜いていったサラリーマン。

坂本冬美なら好きだし、聴きに行っても良いけど、

はっきり言ってその歌手のは、あまり乗り気じゃないんだわ、

まぁ、実際に聴けば好きになるんだろうけど…」

という会話とともに私を追い抜いていった40代と思しきサラリーマン。


確かに坂本冬美は、私も悪くないとは思う、「あばれ太鼓」はいいと思う。

彼が遠まわしで断りを言っている、電話の相手からお誘いを受けている歌手は、

一体誰なのかとても気になったのである。

それはともかく、彼は、ガーランドの「グルーヴィー」を聴かないまま、

生涯を終えるのかもしれない。

「実際に聴けば好きになるんだろうけど」なぁ、そういう機会が彼に訪れますようにと、

祈らずにはいられない如月の夜なのであった。