遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

王のハープ ~ルイ14世宮廷の音楽/ローレンス・キング

イメージ 1

 朝、NHKFM(カーラジオ)から流れてきた一曲がある。
 ハープの曲であった。「この曲欲しい」と思い、タイトルを必死で頭に叩き込んだ。NHKは、ご親切に、曲名を音楽が終わってからも紹介してくれるのである。
 しかしながらタイトルが長すぎて、しかも耳慣れない単語が並んでいたので結局「王子」「死」「ハープ」の言葉しか頭に残らなかった。
 作曲者も、いったん名前を覚えたのだが忘れてしまった。

 少ない手がかりをもとに、ネットで検索して、捜し当てることが出来た。
 お目当ての曲は、ヨハン・ヤーコプ・フローベルガー作曲の「王子フェルディナンド4世の悲しい死に寄せるラメント」であった。ラメントは、嘆きの歌とか追悼曲という意味らしい。

 「フローベルガー(1616~1667)は、オルガン・クラヴィーアの大家として、バッハに至るドイツ鍵盤音楽の流れの中でもとりわけ重要な役割を担っている作曲家」なのだそうな。なんと、J.S.バッハ (1685-1750)より前の時代の作曲家であった。

 アルバムのタイトルは「王のハープ ~ルイ14世宮廷の音楽」というもので、バロック・ハープを弾くのはローレンス・キング。
 全22曲70分を越える長さのアルバムで、フローベルガーの曲は最後の2曲だけで、あとは、コルベッタ、クープラン、ヴィゼの曲が入っている。

 演奏者も作曲家も知らないし、第一ハープの演奏に興味がない。普通なら、まず買わないというか、出会ってもスルーするCDであろうが、あのカーラジオからの1曲が忘れられなくて、ネットでエイヤーと購入した。

 これが、大正解であった。ハープの音が奏でる、旋律も和音も実に心地よく、ラファエロの絵の如く、何の違和感もなく、すんなり受け入れられる。バロック・ハープは、グランド・ハープのような、洗練され完成された音ではなく、少しノスタルジックな響きがする。奏法も違う。
 
 ハープの響きはノスタルジックだが、曲想はなぜか不思議とモダンな感じがする。私にとって新しい出会いであるからなのかもしれない。これらの曲は、場所・場面を選ばない。

 静謐な朝に、官能的な夜に、どちらにもぴったりフィットする。