遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

超難関!タクシー運転手試験~ロンドン

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タクシーに乗ることはまずない。しかし、先週一人で京都に行きなぜか急に体調が悪くなり、近くの病院へタクシードライバーに連れて行ってもらうはめになった。病院で医師に診てもらって特に悪いところはないと言われたら、自力回復して電車で自宅まで帰ってきたのだが、タクシーのありがたいところはそういう時なんだと実感。

それで思い出したのだが、3カ月ほど前NHKの「地球ドラマチック」で、ロンドンのタクシー(ブラックキャブ)の運転手試験が取り上げられていた。

地球ドラマチック「超難関!タクシー運転手試験~ロンドン ブラックキャブ~」

この試験がとんでもなく難関で、受験者は2万5千の通りと10万のランドマークを正確に記憶する必要があるというのだ。

テレビカメラは試験のもようを捉えていて、試験官と受験者の1対1のやり取りが緊迫感あふれるものだった。

試験官は、出発地のランドマークと到着地のランドマークを指定する。受験者は、そのランドマーク間の最短の道順を間違えなく答えなければならない。

試験官「〇〇ホテルから○○美術館までの道順を答えてください」
受験者「○○通りを直進して、右折して△▲通りを直進して、左折して◎●通りを直進し~~」
受験者は、到着地までの道順を延々と口頭でトレースしていく。

これはブラックキャブのドライバーとしての知識を問われるナレッジ試験で、その他にも技術的な試験もあるのだろうが番組ではナレッジ試験だけの紹介であった。

先述したように、この試験をパスするには、2万5千の通りと10万のランドマークと、それらの関連性を完全に覚えなければならない。その受験勉強のために、彼らはバイクで来る日も来る日もロンドンを走り回る。

PCで通りやランドマークを暗記するといったデジタル要素は皆無で、受験勉強はハンドルにパネルと地図を貼り付けて、通り名をチェックしながら道順を体感するためにバイクで走り続ける。バイクで転んで事故った女性は、車で現調を繰り返していた。受験者の走るその距離は、地球2周分(8万キロ)くらいだという。

この試験にパスするには、平均で3年ほどかかり、10年近く受験を続けた合格者もいたという。その間にランドマークが変わったりするので、受験者は本業を持ちながら、安定的高収入のタクシードライバーになることを夢見て日夜バイクでロンドンを駆け巡る。

弁護士や医師と並んで最難関の資格試験をパスしたブラックキャブのドライバーはあこがれの的の職業だとか。NHKの番組で紹介された受験者は、男も女も老人もアフリカ系男性もいて、みな同じように美しい努力家であった。

私は行ったことがないが、ロンドンに行かれたら、ぜひ一度ブラックキャブにお乗りいただきたい。おそらく、料金分の満足は得られるだけのサービスをドライバーが提供してくれるはずである。

(画像は最新の電気自動車:EVのブラックキャブ。2018年から新規登録のブラックキャブはEVが義務付けられた。)