遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

サザエさん一家が平和でありますように

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ドナルド・トランプが選挙戦で盛り上がるかっこいい楽曲を探し出してきて使っていた件で、自分たちの曲を使われていたローリング・ストーンズエルトン・ジョンエアロスミスなどが「勝手に使うな」と使用差し止めしていたニュースは、溜飲の下がる思いだった。

R.E.M.というバンドのマイケル・スタイプにいたっては、「くそくらえ!(Go fxxk yourselves)この、みじめで、受け狙いの、権力亡者の小人物どもめ。僕らの音楽や僕の声を、選挙のためのお前らの低能な茶番に使うな」と言い放った。

彼らの抗議は、素晴らしいことこの上ない。大統領候補といえども無礼な人間は、彼らにすれば「ピーッ」が入ってしまう使ってはならない言葉でこき下ろしてしまうのである。素晴らしい。

話は変わって、日本会議自民党は、現憲法の24条を改正すべきだという主張を強めている。自民党改憲草案では、例の「家族」のあり方を憲法で定めようとする、あれである。

そして日本会議の理想の家族形態は、親子三代が暮らすサザエさん一家なのだという。

確かにサザエさん一家は理想の家族だと思うが、日本会議の目指している世界の一番遠いところにいるのがサザエさん一家ではなかろうか。
戦後の穏やかな空気の中で生まれた、平穏な家族生活をコミカルに描いた世界が「サザエ」さんだから、お上に「なければならない」といった調子で縛られたくない平和で自由な人たちが描かれた一家なのである。

どさくさに紛れて、サザエさんを勝手に利用するな、と言いたい。自分たちの楽曲を使ったトランプを罵ったミュージシャンたちと同じ気持ちで、日本会議に抗議したい。親子三世代が同じ屋根の下でゆったり暮らせる世界は、もう遠くなってしまった。政権から見捨てられた戦後の庶民の暮らしは、悪化の一途をたどっている。

軍隊を持ち主権在民基本的人権を排除した憲法改正のもとで、サザエさん一家の存続はあり得るのか、自民党日本会議はがそう思っているのだとしたら、マイケル・スタイプの言葉を借りて言うなら「僕らのサザエさんを、選挙のためのお前らの低能な茶番に使うな」と言いたい。

サザエさん一家が永遠に平和であることを、祈らずにはいられない。

【参考】
●現行の日本国憲法24条
 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
(2)配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

自民党改憲草案24条
 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。
(2)婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
(3)家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。