遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ブルージャスミン/ウディ・アレン

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監督・脚本 ウディ・アレン
      サリー・ホーキンス、ルイスC.K
日本公開  2014年5月10日  上映時間 98分

エリザベス1世役で2度(1998年と2007年)のアカデミー主演女優賞にノミネートされたものの、受賞がかなわなかったケイト・ブランシェット(1969-)。
このウディ・アレンの作品で念願のアカデミー主演女優賞を獲得した(助演女優賞は2004年に「アビエイター」で受賞)。その他、ゴールデングラブ賞英国アカデミー賞など、全世界の主演女優賞のそのほとんどをまさに総なめにした。

主人公のジャスミンは、妹に会いにNYからファーストクラスでサンフランシスコにやってきた。シスコの空港で受けとるスーツケースはルイヴィトン製。シャネルのジャケットを着て、腕にはエルメスバーキン。気品のある容姿でどこから見てもセレブである。

しかしジャスミンは、一文無しでサンフランシスコへやってきた。離婚して2人の子どもと暮らす貧しい妹の家に身を寄せるために。
実業家だと思っていた夫は、実は詐欺師だったのだ。大学を中退してまで一緒になった夫との裕福な生活は、黒い金によるものだった。大学生の一人息子は、その家庭に絶望して学校を退学し、両親のもとを去った。

マンハッタンでのセレブの暮らしから比較すると、妹家ではじめたジャスミン生活は没落と凋落のどん底生活であった。酒と薬の日々が続き、人生の再出発にはそれまでのセレブの生活がじゃまをした。また、彼女の出現で妹の周辺にもいろいろと波風が立ち始める。まさに、ブルーなジャスミンなのであった。

この作品は日本ではヒットしなかったかもしれない。映画を劇場へ見に行く若年層には、こんな夢も希望もないストーリーは耐え難いと思う。しょせん映画だ、これはドタバタ喜劇に近いストーリーだと受け取れないだろう。主人公ジャスミンへの思い入れが、この作品を笑い飛ばすことを拒むだろう。

そういう映画の見方は確かに悪くはない。洋画の人気の凋落は、しばしそこに感動がないからなのだろう。挫折のまま放り出される映画に時間を費やし対価を払えないからだろうと思う。アメリカ映画は、ずっとこうなのだが、見る方が変わってきてしまったのだと思う。作品には男が5・6人登場するが、おおよそ男の持つ特性のすべてを、彼らは体現している。それだけでも特筆ものだと思うよお嬢さん。

自身も凋落した私生活を経験したであろう変人ウディ・アレンの、変化球ばかりの投球を受け止められる女優は、いまやケイト以外には考えられない、大好きだ。