神奈川近代美術館に残るこの作品は、松本竣介にしては大きなサイズの作品である。
彼はもっと抽象的で前衛的な作品を多く残しているのだが、
この作品の人物はていねいな筆使いで丹念に描かれている。
この作品の人物はていねいな筆使いで丹念に描かれている。
この「立てる像」のモデルは、松本竣介本人である。
もう少しで夜のとばりが降りるころだろうか、
背景の帰路を急ぐ男たちは闇に溶け込み、夕食の支度なのか煙突からの煙は空に溶け込んでいく。
背景の帰路を急ぐ男たちは闇に溶け込み、夕食の支度なのか煙突からの煙は空に溶け込んでいく。
その背景の町をキャンバスの下半分に低く描き、キャンバス中央に自分を大きく立たせている。
戦火から遠く離れた平和で静かな町の中に、
顔を少し上向きにすっくと道の真ん中に立たせた自画像は、
力強い身体からパワーを感じる反面、表情は穏やかで未来への希望を感じさせる。
不思議なパワーを感じる、一度見たら忘れられない松本竣介の自画像である。