遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ネフェルティティ/マイルス・デイビス

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このアルバムは1967年の録音、

私は1973年にレコード店でバイトを始めた。

当時、マイルスのアルバムを買うためには、

10時間以上もの時間給をつぎ込まなければならなかった。

ところが、いまこのアルバムは690円で買えるのである、

いまの学生アルバイト時間給1時間分以下の価格なのである。


価格が下がっても、価値は下がりはしない。


このマイルスの第二期黄金クインテットがライブに出ていると、

「マイルス、昔の感じでマイ・ファニー・バレンタインを演奏してくれないか」

などとリクエストされても、

「家に帰ってレコードを聴いてくれ」と、マイルスは決してそんな注文には応じなかった。

岡本太郎の名言に「僕に過去はない!」というのがあるが、

確かに優れた芸術家に過去はないのである、

マイルス・デイビスはまさにそれを体現した芸術家であった。


この「ネフェルティティ」は、マイルスのアルバムとしては、

最後の完全アコースティックサウンドとなっている。


全編相変わらず素晴らしい演奏である。

現代音楽のようなマイルスとショーターのユニゾンが延々と続くかと思えば、

コロコロと良く転がる男前マイルスのソロや、ビーバップな若武者ショーターのソロや、

ハイブローでおしゃれなハービーのピアノ演奏や、

雨ニモマケズ風ニモマケズ、なにがあっても微動だにしない、

ロンとトニーの全天候型オールアメリカンリズムセクションが、

ああこれぞジャズだと嬉しがらせてくれる。


時代を経て価格が下がっても、価値は色褪せない。


■パーソネル
マイルス・デイビス(トランペット)1926-1991
ウェイン・ショーター(サックス)1933-
ハービー・ハンコック(ピアノ) 1940-
ロン・カーター(ベース) 1937-
トニー・ウィリアムス(ドラム)1945-1997

録音 1967年6月7・22・23日、7月19日 ニューヨーク

曲目リスト
1. Nefertiti
2. Fall
3. Hand Jive
4. Madness
5. Riot
6. Pinocchio
7. Hand Jive (First Alternate Take)
8. Hand Jive (Second Alternate Take)
9. Madness (Alternate Take)
10. Pinocchio (Alternate Take)