遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ファーゴ/コーエン兄弟

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ノーカントリー」のコーエン兄弟の作品「ファーゴ」をCSテレビで鑑賞。

TV画面で偶然目にした「コーエン」の文字に惹かれて、

ウィークデーの夕食後に98分の映画を鑑賞してしまった。



非常に仕事ができる男ハビエル・バルデムを起用して、

迫真の映画を創りあげたコーエン兄弟

この「ファーゴ」では、

お馬鹿でおいたな男たちを追い詰める女性警察署長に、



胎教によくないだろうに、いま少しで臨月というような大きなお腹を抱えて、

この女署長が、淡々と捜査を進めていくところが、何とも嬉しくなる。

もうじき母になる仕事のできる女署長が、ポワンと見事に描かれている。


フランシス・マクドーマンドは、イェール大学のスクール・オブ・ドラマで学んだようだが

当時のルームメイトが、ホリー・ハンターだったという。

ハンターにどこか似ている、と思って見ていたので、このエピソードに接して少し驚いた。

マクドーマンドのそのほんわかとした演技に、

その年のアカデミー賞主演女優賞が燦然と輝いたのであった、

まことに異議なしの受賞であろう。


ファーゴはノースダコタ州最大の都市。

私たちの左手の手のひらをアメリカ合衆国だとすると、

ノースダコタ州は、人差し指の付け根のあたりに切手のような形で位置し、

北はカナダとの国境となっている。


そのファーゴ周辺の一面銀世界の冬の短い数日を、

軽快で上質なユーモアがただよう作品に仕上げたコーエン兄弟の世界は、

センスがよくて上品である。

血生臭いのだけど、笑ってしまうところが随所に現れ、楽しい。

アメリカの映画館では、館内で爆笑シーンが幾つも生まれたのではないかと想像する。


製作費は700万ドルで、興行収入が2460万ドルというのもうなずける。

カーター・バーウェルの音楽も、雪の大平原に実によくマッチして秀逸である。


たとえコーエン兄弟チネチッタで育ったとしても、

こういう作品は、ヨーロッパでは生まれないだろうなと思うのである。


アカデミー賞では作品賞を含む7部門の候補、
受賞は主演女優賞、脚本賞の2部門
カンヌ国際映画祭監督賞、英国アカデミー賞監督賞など受賞多数。
インディペンデント・スピリット賞では作品賞や監督賞を含む、
候補になった6部門全てを受賞。
日本では1996年度のキネマ旬報外国語映画ベスト・テン第4位にランクインした。