遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

チャイコフスキー:「弦楽セレナード」ハ長調

食道ガンの手術から復帰した小澤征爾の指揮振りが注目されていたが、
腰痛により、チャイコフスキーの弦楽セレナードのみの出演となったようだ。
その公演のリハーサルと本番の様子が、昨夜のNHKBSハイビジョンで放送されていた。

小澤は闘病生活中に15kgも痩せたようで、
確かにその姿は、私たちの知る彼の姿とはほど遠いものだった。
で、15kgの減量で身体を支える筋肉も落ちてしまい、
腰への負担が大きくなり、腰痛がひどくなっての休演だったようだ。
しかし、チャイコフスキーの「弦楽セレナード ハ長調」のリハーサルでは、
1日20分以内との医師との約束をオーバーするほどの熱意で、
は~、人は好きなことをやっているときはいきいきと麗しいものだと、感心してしまった。
 
9月1日のリハーサル風景、
今日はまずアレグロのところからやります、という小澤のことばに、
楽団員がドッと笑う。 その時点では、何が可笑しいのかよく分からない。
楽団員の曲のはじめからやりたいという声に、小澤も了解して練習が始まると、
いつのまにかチャイコフスキーが「♪ハッピーバースデイトゥユー」に変わる。
サイトウキネンオーケストラは、冒頭の部分ですんなりハッピーバースデイに入っていきたかったから、
アレグロからやりたいという小澤に肩すかしを食らって、どっと笑ったのであった。
私はこの場面で涙が流れ出した。
2010年9月1日は、小澤征爾75歳の誕生日であった、もっと長生きしてもらわねば。

それから、例によって、若手の演奏家に練習をつけるイベントも、
精力的にこなしている様子も放送されていて、楽しく安心して見ることができた。

その番組では「弦楽セレナード」の松本での本番のもようと、
2008年にカラヤン生誕100年記念でベルリン・フィルを振った、
チャイコフスキーの「悲愴」の演奏会全編が放送され、たっぷり楽しむことが出来た。

音楽は演奏家にも私たち聴衆にも、他に類を見ない治療薬だな~と思ったからか、
小澤が振るサイトウキネン・オーケストラの「弦楽セレナード」に、涙が止まらなかった。
 
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