家族が留守の間に、
TVで放送され我が家の録画機に保存されていた
「おくりびと」を、ひとりで観た。
家族とTVを観ていて、涙が出てくるシーンに出くわすと、
それを察知されないために苦労するので、
「おくりびと」はひとりで観た。
案の定、涙がぽろぽろよく出たが、
映画自体は、まあこんなものかという感じであった。
NHKの山根基代アナがラジオで話しているのをかつて聞いたことがある。
納棺師を志した青木氏の半生に触れ、
偶然に、青木氏の元恋人の父親の納棺をすることになったエピソードに、
とても感動したことをおぼえている。
なので、「おくりびと」という納棺師の映画が完成したと聞いたときは、
間髪をいれず、あっあの納棺師の物語に違いないと思った。
しかし、一般公開時に観ていた娘に質してみると、
元恋人の父親を納棺するという感動シーンはなく、
ストーリーは原作とは別仕立てにしたようであった。
さて、作品は想像していたより、終始明るく軽快な流れであった。
本木が納棺師として最初に手がけた、
若くして亡くなった美女への一連のお仕事ぶりは、
まさしく、冒頭の「つかみ(!!)」として成功していたし、
最後は感動的な盛り上げを狙っていて、メリハリもあって、
それがハリウッドで受け、アカデミー協会員にも通じたのだろう。
ただ、私と近い世代の映画監督、たとえば、根岸吉太郎(1950年生まれ)、
滝田洋二郎(1955年)の作風は少し幼いと思った。
広末涼子の起用が失敗だったということは別にしても、
美しい大自然の中でチェロを弾く主人公や、
主人公の父親にまつわる最後の盛り上げ方などが、
私にはなんだか大味で単調で浅くてつまらなかった。
作品に落ち着きを与えていたことが、せめてもの救いであった。
アカデミー協会員は、「天国と地獄」(1963年)、
「赤ひげ」(1965年)、影武者 (1980年)の
山崎努を憶えておいでだったのだろうか、少し気になった。
見直してみたくもなった。