遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

処女航海/ハービー・ハンコック

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処女航海


1. 処女航海
2. ジ・アイ・オブ・ザ・ハリケーン
3. リトル・ワン
4. サヴァイヴァル・オブ・ザ・フィッテスト
5. ドルフィン・ダンス

《アーティスト》 ハービー・ハンコック(p)、フレディ・ハバード(tp)、ジョージ・コールマン(ts)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)
(1965年3月17日録音)


総選挙後の新政権の船出は、出航までいま少し時間がかかるようだ。

いずれにしろ、これが処女航海となるわが国の新政権に夢を託して、

今日の一枚は、ハービー・ハンコックの「処女航海」。


「1. 処女航海」の最初の一フレーズを聴いただけで、

これはモード・ジャズの典型的な曲だと認識できよう。



この1枚の前に紹介した、

モンクの「ブリリアント・コーナーズ」の楽器編成とほとんど同じで、

録音時期が10年も隔たると、かくも音作りが変遷するものなのかと、

あたりまえのことなのにやれやれと思うのである。


嵐の予兆すら感じさせない静かな海を、滑るような処女航海で、

船長はマイルス・デイヴィスだと言われたとしても、違和感のないアルバムである。


ハービー・ハンコックは、後に電気仕掛けの楽器を弾くことになるが、

この頃の音作りにも、その後を容易に想像できるようなフレーズが頻出する。

「4. サヴァイヴァル・オブ・ザ・フィッテスト」の

ハービー(p)とフレディ・ハバード(tp)とジョージ・コールマン(ts)のヴィヴィッドな演奏は、

滑るような航海とは一味違う、下手をすると悪酔いしそうなドライブ感がある。



わが国には、このアルバムのファンが多く存在する。

私は、アルバム全体のピアノトリオ=リズムセクションを核とした、

アコースティックなアンティーク・ムードこそが、聴く人を魅了していると思う。


そのリズムセクションのしたたかな営みは、

マイルスという母船を一旦離れたハービー丸の、

処女航海を安全に保つには、十分なものであったと思うのである。