遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

大いなる陰謀/ロバート・レッドフォード

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大いなる陰謀



とある大学の民主党支持のリベラルな教授役が、ロバート・レッドフォードである。

彼の教え子、大学院に楽勝で進学できる優等生二人は、

ヒスパニック(?)系とアフリカ系であった。

彼らは20万ドルの借金をして大学院へ進むことを一旦保留して、

あろうことか、イランへ派兵される志願兵になっていた。


映画の最後に、その大学キャンパスに設置されたテレビ画面が急に切り替わり、

臨時ニュースに取って代わる。

ネタバレになるので詳しくはいえないのだが、

その大学に関係があるとても重要な「あのニュース」の速報が流れるのかと思いきや、

何某という女優の離婚関連のゴシップ・ニュースであった。


また、その臨時ニュースで女性キャスターが何かを伝えている画面下に、

テロップで別のニュースが流されている。


注意深く見ていても見落としてしまうようなニュースの伝え方。

そのニュース原稿を書いたのが、テレビ局お抱えの敏腕記者メリルストリープ。

次期大統領候補に最も近いとされる政府要人トム・クルーズに呼ばれて、

単独インタビューという恩恵にあずかり、本来ならスクープ記事のはずであった。

しかし、政府要人トム・クルーズの単独インタビュー記事は、

対テロ戦略に関する重要なニュースなのに、文字で流されて伝えられただけであった。



ストリープ記者は、その内容がどうにも不自然だったこともあり、

見落としてしまわれるような流され方で、よかったのだった。

そのニュースが流れていた頃、当のメリル・ストリープは、

タクシーの窓から見えるおびただしい数の兵士の墓石が並んだ、

アーリントン墓地を目にして、この国の行く末を心配げに、

感慨深げな表情をしている。



レッドフォード教授と学生のやり取りと、

クルーズ議員とストリープ記者のやり取りが中心で、

いくら大物俳優を配したからといっても、メリハリが少なく退屈である。

彼らのやり取りの内容は格調は高いが、

私たちに「考えてちょうだい」と下駄を預けすぎである。


マイケル・ムーアのように体当たり取材で、

時の政権を徹底的に告発する作品の方が面白いのだが、

レッドフォード監督は、大学研究室と議員執務室での出演者のやり取りを、

同時進行形式で90分間のドラマ仕立てに仕上げた。

ドラマ仕立てで「これでいいのか作品」をこのように作った。


これでいいとは思っていない私には、

監督の意志が十分に伝わった作品ではあった。


これは、ブッシュ政権も終わりに近くなった2007年の作品で、

これでいいのかと言い続けていたリベラルな人たちがいたせいで、

いまのオバマ政権があるのかもしれない。