永遠の仔〈上・下〉 天童 荒太
天童は実に寡作の作家である。
私の本棚にある「永遠の仔」は、1999年の版で、
同年3月に本作品は発売された。
それからほぼ10年後の1月に、晴れて直木賞を受賞したのである。
10年の月日の経過の速さに、今更ながら驚いている次第である。
「永遠の仔」は分厚い上下の単行本であり(文庫も有り)、
原稿用紙で実に2385枚だそうである。
上巻を読んだ私は、下巻を読み始めるまで、
1年以上時間をおいている。
例によって、先に読み終えた女房が「これすっごいで~」、
早く読めと催促するのだが、なぜかしばらく下巻を手に取らなかった。
児童養護施設で出会い育った男女3人の幼なじみ、
いまは看護師、警察官、弁護士と立派な成人になっている。
彼ら3人を取り巻く、生い立ちから大人になるまでの、
長編大河ドラマである。
決して激しくない静かな物語なのだけれど、
悲しくて深い慟哭の物語である。
村上龍はこの本の帯に次のような推薦文を寄せている。
衝撃という言葉では足りない。 天童荒太は、少年たちの壮絶な 成長を克明に描き切っていた。最 大のミステリーは人間の内部にあ る。時間を忘れて読んだのは、こ の生命の物語が、愛おしく、そし て驚異的だったからだ。
人間とは素晴らしく、かつなんと酷い存在なのだろうかと、
ため息が出てしまうのである。
その船越の表紙の「悼む人」での受賞、
春からおめでたい事である。