今朝、東京はJRなどの自動改札機が故障したとかで、
ニュースでは騒いでいたが、
東京駅など主要ターミナルの混雑、実際はどうだったのか。
さて、地元の書店を覗いて、
平積みにされていた女流作家恩田陸の本を何気なく手に取り、
購入してしまった私。
その作品が、この小説「ドミノ」。
舞台は東京駅、
そして、登場人物が27人と1匹。
丸の内の生命保険会社のOLたちやその上司。
契約の締切日の当日、何とか目標に達する大口契約を取って、
千葉から丸の内を目指して帰社してくる部長になんだかトラブルが…。
ミュージカル「エミー」のオーディションを受けに来た、
母娘2組を待ち受けるトラブル多数。
ネットの句会仲間に会おうと、
北関東の田舎から東京駅の待ち合わせ場所にやってきたおじさん一人。
おじさんにとっては東京駅はダンジョンのごとく、
厄介ごとが次々に訪れる。
そのおじさんとオフ会をしようと待ち受けるのは、
元刑事で定年後も血気盛んな面々、
きな臭いことを嗅ぎ分ける能力は、まだまだ衰えない面々。
恋人に別れ話を告げに、待ち合わせ場所の東京ステーションホテルに、
ダミーの彼女役に扮した美人の従姉妹と同伴で現れた青年実業家、
次から次へと恋人を変えて行くたび、
常套手段として「新しい恋人」役として従姉妹を利用するのだが…。
大学のミステリー・サークルの次期キャップを争う二人の学生。
街角で偶然見つけた人の職業や年齢やプロフィールを、
シャーロック・ホームズのごとく推理して、
正解に近い方を次期キャップにしようと、
現幹事長がジャッジ役でふたりに密着。
ハリウッドのホラー映画の監督は、
次回作は東京で撮ろうと、来日後はロケハンをしたり、
東京ステーションホテルの自室で、日本のホラー映画を徹底的に研究している。
熱心な研究のさなかに、彼の連れてきたペットが、
飼い主を放置して部屋を抜け出してしまう。
爆破物専門の過激派「まだらの紐」のメンバー3人。
(「まだらの紐」は、「シャーロック・ホームズの冒険」に登場する
あの名作だ。)
彼らは、効果的な被害を期待して、
精巧な爆破物を東京駅に仕掛けようとやって来るのだが…。
登場人物をざっと紹介しただけで息切れしそうなのだが、
この27人と1匹が、
東京駅を舞台に、くんずほぐれつスラップスティック振り回す。
376ページの短い作品に、
よくぞこれだけの登場人物を書き分けたなぁと、
ニコリと感心してしまう。
どこにでも生息していそうな登場人物たちに、
少し味付けして小説仕立てにし、
すべての個性を立ち上がらせて、
読み手を迷宮に誘い込まない、混乱させない明晰な手腕に、
ポンパと手を打ってしまう。
ドミノ倒しの如きスリリングで、
わははと愉しい楽しい一冊である。