遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

熱情/ベートーベン

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バレンボイムのベートーベン・プロジェクト マスタークラスに

中国の新進気鋭のピアニスト、ランランが生徒で出演。


バレンボイムは指揮者としてはよく存じ上げているが、

優れたピアニストでもあることを再確認する。


この番組は、バレンボイム先生が若手ピアニストを、

といっても「マスタークラス」グレードなので、

先生より有名だったりする生徒ピアニスト達が教えを請うという設定。


課題曲はもちろんベートーベンの曲で、ピアノソナタ「熱情」。


ランランは、名前も風貌もパンダみたいな好青年であるが、

先生の指導を得て、さらに高みに到達してゆく。

番組では、その経過が、手に取るようにわかる企画になっている。


実は、私のような素人には手に取るようにはわからなくて、

へー、ふーん、と、先生の要求することに感心しきりで、

それに応えられる生徒にもまた感心してしまう。


アルゼンチン生まれのユダヤ人先生に、

若き中国人青年が、英語でレッスンを受けている。


しかし、言葉で音楽の素晴らしさを伝えるのには限界があるのと同様、

ああいった高度なレッスンに、言葉で何かを伝えるのはもどかしい。


しかしそれでも、バレンボイム先生は、ピアノも弾いてみて、

私が聞いた事のないような表現の言葉でも、ランランに指導をする。


弾きはじめの音は、最後の音を意識して!

ひとつひとつのフレーズは意味を持たない!音楽とは、統合すること。



番組最後に先生は、自身の思い出話に掛けて、

演奏家たちへのメッセージを発した。



ルービンシュタインが好きだった14歳のダニエル・バレンボイム少年は、

ホロビッツに会う機会があったという。

巨匠はバレンボイム少年の演奏を褒めてくれたあとに、

これからも演奏家として成長するためには、

常に「意志」を持ちなさいといってくれたそうである。


意志を持つこと。弾く時にどれくらい日常を忘れられるか 、

そういうことを心がけることが大切だと教えてくれたそうである。


ホロビッツの言葉は、演奏家の心にのみ響くものではなく、

生きていくものに共通するメッセージだと、私の心にも響いたのであった。


それで思い出したのが、

情熱大陸」に出ていたバイオリニストの庄司紗矢香が、

「怖いこと? それは聴衆が私の技術だけを聴きに来ることかな」

と言っていたことである。


庄司は、チャーミングで小生意気でおっとりとした雰囲気を持ついい演奏家だが、

はっきりと音楽的「意志」を持つ演奏家でもある。