遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

エデンの東/エリア・カザン

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  エデンの東  East of Eden 


監督 エリア・カザン
製作 エリア・カザン
脚本 ポール・オスボーン
出演者 ジェームズ・ディーン
    ジュリー・ハリス
音楽 レナード・ローゼンマン
公開 1955年3月9日 (1955年10月4日:日本)
上映時間 115分



アダムとイブの2人の子ども、兄のカインと弟のアベル

神はカインの捧げ物を無視し、アベルの捧げ物に目を留められた。

カインは嫉妬と憤りから弟のアベルを殺す。




BSハイビジョンシネマにて鑑賞。


映画の主人公の兄弟、兄がアーロン、弟がキャル、旧約聖書の兄と弟とは逆である。

キャルは弟殺しのカインを、アーロンはアベルを連想させる。

言わずもがなのことではあるが、弟キャル役をジェームス・ディーンが演じた。



父親に何をやっても認められないキャルに対して、

優等生の兄のアーロンは、父親の溺愛を受ける。


この兄弟は、幼くして母親が家を出て行き、父親に育てられたのだが、

その父親にさえ愛されずに育ったキャルの理由なき反抗は、

最終的に兄のアーロンに集約されるのである。


キャルはカインのようにアーロンを殺さないし、血も流させない。

しかし、兄は同等の残酷な仕打ちを、弟から受けるのである。


自宅に帰って来ない兄の行方を父親が弟に尋ねると、

「僕はあいつの番人ではない」(旧約聖書のカインのセリフ)とキャルは応え、

父親と母親と兄への、やるせない醜い復讐を成し遂げるのである。


スタインベックの故郷サリナスの渓谷に住む、

裕福な農場主の家族、

父親と2人の兄弟、

そして、その純粋な夫に束縛されるのに我慢がならなかった兄弟の母親。


この「弱き」4人を見事に描ききった

殊に、ジェームス・ディーンの自由奔放な魅力を充分に引き出した、

エリア・カザン監督の不朽の名作である。



映画の冒頭でレナード・ローゼンマンの主題曲が流れただけで、

私は、もう涙が出そうになるのである。

このテーマ曲でさらに☆ひとつの価値があるのである。




「おまえは地上をさまよい歩くさすらい人となるのだ」

と神に呪われたカイン、

「私は会う者すべてに命を狙われます」と懇願するカインに、

神は彼を守るしるしを捧げられた。


そのしるしのおかげで、彷徨の後カインはエデンの東に無事到達したという一節も、

映画の中のキャルもそうであったことと一緒に、付け加えておきたい。