彼は弁護士事務所を辞め、この自身はじめての作品「キングの死」を、
地元の図書館に1年間通い詰めて執筆したのだそうだ。
主人公は著者と同じ弁護士で、主人公の一人称で書かれた作品である。
主人公の父親が、これまた弁護士で、
資産家で大金持ちで、社会的地位は申し分ない男、
しかし、家庭内ではどうしようもない暴君、絶対的君主であり、
まさに「キング」である。
その主人公の父親が失踪して1年半後、死体で見つかり、
父親殺しの容疑者の嫌疑が、その長男である主人公にかかるところからこの物語は始まる。
繰り返しになるが、主人公の一人称で語られている作品であるから、
読み手は彼が犯人でないことが手に取るように判る、
そして、自分の妹が犯人ではないかというある確信から、
主人公の聖戦が始まるのである。
友人だと思っていた検事を敵に回し、
切れ者女刑事との精神的壮絶バトルを展開し、
幼なじみで結婚後も関係を続ける天使のような恋人の心を傷つけ、
若き弁護士としては理想的な麗しくセクシーな妻と軋轢を起こし、
たった一人残った家族である妹とそのガールフレンドに、
父親に似ているということから、徹底的に無視され、
そんな四面楚歌のなか、
主人公は自分の無実の証明のために闘うのである。
画像の表紙、
階段の上に君臨するのがキング(父親)であり、
階段下の左腕は、(主人公とその妹の)母親の腕である。
この表紙が象徴する「華麗なる一族」の、物語である。
人は何に寄り添って生きるべきなのかを考えさせてくれる、
感動の大河ロマン&ヒューマン・ミステリである。
著者は、作家に転職して多くの読み手を救うことになるのであろう。