遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

スティーミン/マイルス・デイヴィス

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私が学生だった1975年頃だったか、

京都は祇園八坂神社石段下のビジネスホテルの喫茶ルームで、

ジャズトランペッターの日野皓正、

ジャズピアニストの菊池雅章らと遭遇した。


彼らは公演を終えた翌朝だったのか、

ひっそりとしたホテルの喫茶ルームでブランチの最中であった。

映画「ダーティ・ハリー」の話をしていて、

日野がマグナムを両手で構えて撃つマネをしていたのを思い出す。


私たちは、貧乏学生であったが、

日野たちも決して富裕層ではない感じであった。

そこの安いビジネスホテルに泊まっていたのであろうし、

ファッションはいくら夏の私服とはいえヨレヨレで、

ハリー・キャラハンの足元にも及ばない格好をしていた。


でも、彼らは充実した日々を送っていたのだろうか、

私たちの視線を気にしていたのだろうか、

楽しそうな朝食後のティータイムを過ごしていた。


その後、日野皓正はジャズ界だけでなく有名になり、

メディアにも多く登場する有名人になるのであった。



今回の1枚は、マイルス・デイヴィスクインテットの、

1956年の例のマラソン・セッションの4枚のうちの1枚

「スティーミン」である。


この頃のマイルス・クインテットはまだ駆け出しで、

京都で出合った日野たちのごとく貧しくて、

でもこれから一旗あげようというような時期だったのか。


しかし、彼らも売れていなかっただけで、

コルトレーンはまだ青い感じが残るものの、

歴史的なセッションと後世に伝わるように、

5人のテクニックは既に超一流であった。


「飾りのついた四輪馬車」と「ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ」

のマイルスの歌心溢れるトランペットは、天にも昇る心地の素晴らしさ。


「ソルト・ピーナッツ」と「ウェル、ユー・ニードント」の

ミュートをかけないマイルスのトランペットは、実にスリリングである。



「ダイアン」の中間部での、


ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズ

アノトリオの楽しさ!

これこそジャズである。



名もなく貧しく美しいミュージシャンが、

高みを目指して駆け上ろうとする演奏は、

常に先鋭的で、挑戦的なのだろうが、それに加えて、

マイルス・クインテットには、平常心と自信が溢れている。


パーソネル



曲目リスト
1. 飾りのついた四輪馬車
2. ソルト・ピーナッツ
3. サムシング・アイ・ドリームド・ラスト・ナイト
4. ダイアン
5. ウェル、ユー・ニードント
6. ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ