遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ポップ1280/ジム・トンプスン

イメージ 1

ポップ1280 ジム・トンプスン 三川基好・訳 扶桑社ミステリー



「鬼警部アイアンサイド」という、車椅子の警部が主人公の、

TVドラマシリーズがかつてあり、私は欠かさず毎週見ていた。

「ペリー・メイスン」役で一世を風靡したレイモンド・バー主演の、

優れたTVドラマであった。若山弦蔵の吹き替えも秀逸であった。




「ポップ1280」の原作者ジム・トンプスンは、

「鬼警部アイアンサイド」の原作者であり、

スティーブ・マックィーン主演の映画「ゲッタウェイ」の原作者でもある。


「ポップ1280」、人口1280と言う意味で、

そんなアメリカの小さな町の保安官が主人公のお話である。


塩狩峠」とは、対極にある作品である。


雑誌か新聞かの新刊書評で、誰かのお奨めだったので読んでみた。

書かれたのは1964年、今般文庫化されたものである。


トンプスンの作品を読むのははじめて、

なるほど、元祖ノワール作家と称されるのもうなずける、

神を冒涜するような物語が、はじめから終わりまで、

しっかり詰まっている。


もう、朝から言葉にするのもはばかられるような出来事・会話のオンパレード。

TVドラマにはなりえない、作品である。

学校の図書室には置いてないであろう。


主人公の保安官の一人称で書かれているので、

心にうつるよしなしごとが次々と包み隠さず現われてくる。

小心者の私は姿を隠してのブログでも、こういうことは書けない。



「ポップ1280」には、生身の人間が素直に描かれている。


何かについてあることを考え、でもまた別な考えが頭をよぎり、

でも行動するときには学習したこととはリンクしない、

説明のつかないことに立ち至ってしまう。



人間は細胞の数だけ考え思うところがあるような気がする。

説明のつくパーツは10万個くらいか。

残りの数十兆個のパーツは、宇宙のように広大でなんだかよく判らないけど、

面白くて楽しくて怖くて汚くてくだらなくて、

でもキラ星のごとくまばゆく美しい。