遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

飢餓海峡/内田吐夢

イメージ 1

 
飢餓海峡(1965)

監督:内田吐夢
製作:大川博
原作:水上勉
脚本:鈴木尚
撮影:仲沢半次郎
音楽:富田勲

出演
三國連太郎
左幸子
風見章子
加藤嘉
三井弘次
沢村貞子
藤田進
高倉健
伴淳三郎


ケーブルTVで、内田吐夢の「飢餓海峡」を鑑賞。

この名作をずっと未見のまま50代半ばまで過ごしてきた。



台風の中、北海道は岩内の質屋に強盗が押し入り3人を殺害、

同日、青函連絡船が転覆し、乗船名簿にない2人の遺体が収容されるところから、

このミステリーは始る。


時は昭和22年、終戦間もない青森から、

東京、舞鶴と、10年の月日が流れ、

貧しい日本と、青森に生まれた一人の女の半生と、

その周辺の人たちが描かれる。


主人公杉戸八重を左幸子が演じる。

当時35歳ではあったが、溌剌とした娘役から、

芸者役まで、楽々と演じる。


しかし、特筆しなければならないのは、

一途な心を貫く杉戸八重のゆるぎない誠意と、

一途さから生まれる、強さと危うさと悲しみを見事に演じていることである。


左幸子と絡む、もう一人の主人公、三國連太郎

そして、加藤嘉、風見章子、沢村貞子伴淳三郎と、

脇を固める個性派ぞろいの役者が、

渋くて自然で素晴らしい。

彼ら以外では考えられないキャスティングではなかろうか。


加えて、舞鶴署の老練な藤田進署長と青い高倉健刑事が、

良い味を出している。


水上勉の原作は学生時代に読んだが、

内田吐夢の「飢餓海峡」は原作の魅力を損なうことなく、

映画ならではのリアリティを余すことなく伝えてくれている。



美しく悲しい時代は遠くなった。




キネマ旬報「オールタイムベスト・ベスト100」日本映画編

七人の侍    黒澤明
浮雲      成瀬巳喜男
飢餓海峡    内田吐夢
東京物語    小津安二郎


1999年、キネマ旬報社が映画評論家、映画製作スタッフたちを対象に行った
アンケート調査をもとに選んだ日本映画歴代ベスト100のうちの、ベスト3である。