遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

朝ドラ「ちむどんどん」のありえない耐えられない?問題

NHKの朝ドラ、かつては1年を通して放送されていましたが、今にして思えばずいぶん気の長い話だったのでしょうね。全国津々浦々共通の、昭和のエンタメだったわけですが、当時は録画して観ていたわけでもないでしょうから、一話くらい見逃してもどうってことのない展開だったのかもしれません。

いま放送中の「ちむどんどん」、うちの妻は録画して見続けています。頼んでもいないのに、私がテレビの前にいるタイミングでいつも録画を見ていますので、私もおこぼれをちょうだいして、でもあまり入り込まずに「ながら見」しています。

視聴率はそこそこ安定の高打率を保持しているのでしょうが、「ちむどんどん」の評判自体は芳しくないようなことも伝わってきます。

ひとつには、主人公の姉夫婦と保守的なその家族の問題が視聴者にはウザい話になっているのでしょうか。

まあ、描かれている時代が昭和の高度成長期の時代ですから、ドラマの舞台の沖縄に限らず、男の長老が幅を利かしている家父長制もまだはっきりくっきりとかたちが見える時代でしたから、何じゃこりゃ?と思う人もいれば、ああ思い出したくない!と感じる人たちがいても不思議ではないでしょう。
私は相当に田舎育ちですが、嫁姑(よめしゅうとめ)の問題の陰に隠れているかもしれませんが、めちゃくちゃ頑固で古臭い夫の父親「嫁舅(よめしゅうと)」の悩みも大問題だったと認識しています。夫の父親である舅が亡くなった後に、夫の母親である姑との問題が大きくなってくるのかもしれません。

それから、主人公の兄の存在がこれまたウザい話になっていて、あまりにも世間知らずで詐欺被害に遭うにしても、いったいいつまでその被害が続くのかという視聴者のいら立ちが「ながら見」の私にも伝わってきます。

その兄のキャラは、馬鹿っぽいけど憎めないあんちゃんといったところでしょうが、詐欺商法にだまされるのはせいぜい2回ぐらいにしてくれて、牛を育てる農家で新しい人生を切り拓いてくれればいいものを、何度となく騙されても家族が兄を見捨てることなくバックアップする姿が、あまりにも現実離れしていて耐えられない展開になってはいないでしょうか。
世の中には詐欺商法で根こそぎ資産を巻き上げていく悪い奴が跋扈していますから気をつけましょうと言ったような教育映画じゃないのだから、もうちょっとエンタメ要素を考えるべきではないでしょうか。

そして、もうひとつが鈴木保奈美が演じる主人公の義母的の存在。ああいう上流階級の「ざあます調」の母親自体がウザいし、その母親に物申せない主人公のマザコン夫の存在も腹立たしいのではないでしょうか。

 

ということで、1回15分・週5話・半年間(26週・130回前後)のドラマを作るのは大変なことなので、「ちむどんどん」の主人公の義理の兄の家族や実の兄や義母や夫のようなキャラクターを交えなければならないのかもしれませんが、この場合は緊張感やスリルを通り越した、ありえなくてやるせない役柄設定に思えます。

やがて溜飲の下がる復讐劇や勧善懲悪話ならそういう設定もあるのでしょうが、朝ドラの主人公とその家族の静謐さに馴染まない「しつこさ」が不快に思えるかもしれないです。

個人的には2023年春からの植物学の牧野富太郎を描く朝ドラは楽しみにしているのですが、毎日見るのが楽しみだというような朝ドラを考えてほしいですね、NHK