遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

泣き寝入りをしない格差のない社会のために/上智の賃金不払いから見えるもの

上智大学キャンパス

ネットニュースなどによりますと、上智大学で非常勤講師への賃金不払いがあったとして、労働基準監督署が学校側に是正勧告を出していたということです。

《賃金の不払いを申告したのは、語学の非常勤講師を務める60代の女性。
女性は20~21年に教材の作成などで計約105時間分、約75万円の賃金が不払いだったのは労基法違反と主張し、21年9月に申告した。このうち20年3~5月の計22日間(52時間)は、授業がなく無給とされた期間だった。》

大学側は「労基署との相談・協議が継続中であるため」として、コメントを差し控えています。
https://digital.asahi.com/articles/ASQ5Z643QQ5ZULFA013.html

この問題がどういう結論になるのか予想できませんが、その観点とは別にこのニュースで私が感じたことを述べたいと思います。

1 非常勤講師の方は女性で60代
 私は60歳で定年退職しましたが、個人差はありますが、60歳代でも女性でもそれまでのキャリアで就労できることが素晴らしいことだと感じました。きっと熱心な先生なんだろうと思います。

2 何かあった時の労働組合
 このケースの先生は、「賃金が不払いだ」として黙っていないで行動できる人だったわけですが、一般的に「これってタダ働きやん」と思っていても泣き寝入りしてしまうケースが多いと思います。
 文句を言えば「代わりはいくらでもいる」とクビになることを恐れて泣き寝入りしてしまうことが多くて、この先生は労働組合「首都圏大学非常勤講師組合」(横浜市)に加入されていたからこそ行動できたとも言えましょう。
 加入されていた労働組合がどんなところか分かりませんが、労働組合が困った時の駆け込み寺的存在であることを労使ともに再認識すべきでしょう。いまでは「そう言わずにクビにならないように我慢せえよ」という企業お抱えの飼い犬同然の御用組合が多いような気もしますので、労働組合と言ってもいろいろあるにはあるでしょう。

3 何かあった時に抵抗できる人
 この先生は、きっと非常勤講師としての身分の不安定さの保険として、加入費を払って労働組合に入っていたのでしょうが、その前には、何かあったら私は黙っていませんよという意思表示のひとつとしての組合加入でもあると思料します。
 私のバックには「〇〇がついている」というのが「心の支え」になるケースが多々あります。その〇〇には「国」「政治家」「〇〇組(反社)」「弁護士」「労働組合」「政党」「社会的地位のある親」「宗教」などなど、いろいろあてはまります。
 いい悪いは別にして、私も含めて「心の支え」がない人たちは何をよすがに暮らしていけばいいのだろうかと思います。「メディア」「胡散臭くない野党」「しきいの低い弁護士」が健全な社会こそ成熟した社会なのだろうと思います。

4 不払いの時間給と全国最低賃金の格差
 この先生は「105時間で約75万円の未払い賃金」ですから、時給に換算すると約7100円になります。いま全国の平均最低賃金が930円ですから、全国の最賃労働者が9時から17時まで(30分の休憩時間)仕事をして、この先生の1時間分に相当するわけです。
 この先生を貰いすぎだと非難しているのではなくて、貧しい日本の実態を批判して言うと、60代の大学非常勤講師も、大学で清掃業務する20歳の最賃のパート従業員も、どちらも欠くことができない労働者だと思います。一方の1時間の労賃が、一方の一日の労賃と全く同じだというのはどうなんでしょうか、サステナブルでしょうか。

5 消費税の逆進性
 この先生のケース、大学の非常勤講師で時給7000円ですから、それから類推するに世のなかには時給1万円以上の人がたくさんいて、その差は社会的地位なのでしょうか仕事の質なのでしょうか。たとえば、政治家の社会的地位や仕事の質と量はその報酬に見合ったものでしょうか。私は決して見合っているとは思いません。 
 主食である米を買うと、富裕層でも一般庶民でも8%の消費税を取られますし、米を炊く水道水や電気代は一律に10%の消費税を取られます。この一点を見ても、消費税が「逆進性」があるということが容易に理解できます。お金持ちが食べるごはんも私のような貧乏人が食べるごはんも同じ消費税を払わなくてはならないのです。所得税は所得額に応じた「累進性」ですので、消費税を0にするか5%くらいに戻し、高額所得層の累進割合の見直しをはかって、「格差是正」の一歩を踏み出すべきではないでしょうか。これらは、単純明快な政治マターであることは言うまでもありません。

6 まとめ 泣き寝入りをしない社会のために
 ということで、賃金不払いで立ち上がった大学非常勤講師の例にもれず、国民を泣き寝入りさせない格差のない成熟した社会にするために、労働組合や野党やメディアや知識人のご活躍を期待したいと思っている今日この頃であります。

 とりあえずは、1か月後の参議院選挙であなた方は私たちに何をしてくれるつもりなのかをはっきり態度に示していただきましょう。