タングルウッド音楽祭は、毎年開かれるボストン交響楽団のサマーコンサートである。
1986年の「タングルウッドの奇跡」という出来事をご存知であろうか。
その夏、14歳の五嶋みどりは、バーンスタインが指揮をするボストン交響楽団と、
タングルウッド音楽祭でのデビューを果たした。
バーンスタイン作曲の曲を演奏中、
五嶋みどりのバイオリンの弦が切れるというハプニングが起こった。
すかさず、みどりはコンサートマスターのバイオリンを借りて演奏を続けた。
そして、あろうことか、そのバイオリンの弦も切れてしまい、
また、バイオリンを取り替えて、無事演奏を終えた。
当時、まだ小さかったみどりの自前のバイオリンは、
サイズが小さいものであったが、取り替えた大人のサイズのバイオリンで、
演奏をやり遂げたというのが、「タングルウッドの奇跡」という出来事である。
3台のバイオリンを、うちサイズ違いの2台の楽器を、
14歳の日本のリトル・ガールが弾きこなしたことで、
翌日に、ニューヨーク・タイムスの一面に取り上げられた。
そして、この出来事はアメリカの教科書に載り、
少なからずアメリカの少年少女の知るところとなった。
いったい、何の教科のテキストだったのだろうか。
ハプニングやトラブルが起きても、あわてず騒がず対処すれば、
成功が待っている、なんて倫理の授業なのかもしれない。
さて、今回ご紹介は、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲。
共演は、クラウディオ・アバド指揮のベルリンフィルハーモニー管弦楽団。
このCDは、ライブ演奏である。
1995年3月7~11日の、ベルリンフィルのコンサートホールでの、
みどりの客演演奏会であった。
ベルリンの聴衆の前で、アバドとベルリンフィルとともに、
23歳の東洋人がチャイコンを弾く。
すでにこの頃は、こんなシチュエーションは
みどりにとっては、単にひとつの普通のコンサートであった!?
普通、ではないか。
「ちょっとベルリンのお客に、私のすごいとこ聴かしてやろうじゃない」的
コンサートかなっ。やはり。
みどりは11歳のとき、何の予告もなくズービン・メータに、
突然ソリストとして招聘され、ニューヨークフィルの大晦日コンサートで演奏し、
スタンディング・オベーションを受けたそうだから、
23歳でベルリンで演奏することは、やっぱり日常と化しているのかな。
実は、この演奏会はNHKで放映され、私はそのビデオをお宝にしている。
左指の1本1本が、ハンマーのように見える。
その演奏会のCDが、これである。
演奏が終わっても、立ち上がった聴衆の拍手は鳴り止まず、
楽屋にも置かれたTVカメラが、何度も舞台に足を運ぶ、みどりとアバドを捉えていた。
「あ、まだ(拍手)続いてるの?」と言う、みどりのあっけらかんとした様子、
グレイトである。
「じゃぁ、今度、この演奏会の、録音チェック一緒に、よろしく。」
と、アバドに手を振り帰って行くみどり、
プロフェショナルである。
冒頭で、紹介した「タングルウッドの奇跡」の演奏が終わったとき、
バーンスタインは、喝采が鳴り止まない中で、みどりを抱きしめたそうだ。
みどりは、楽屋でバイオリンを貸してくれたコンサートマスターに言ったそうだ、
「コンサートマスターさんのバイオリン、とってもいい音が出ますね。」
NHKは以下のとおり、五嶋みどりのNHK音楽祭の模様等をもうじき放映すると伝えている。
<ラジオ・テレビ放送のお知らせ>
マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団との共演の模様がNHK-FM、
及び、テレビで放送されます。
放送予定日時は、以下の通りです。
12月9日(金)19:20-21:00
NHK-FM ベストオブクラシック
12月10日(土)23:00-
NHKハイビジョン ハイビジョンクラシック館
12月16日(金)24:30-
NHK-BS2 ロイヤルシート
12月18日(日)21:00-24:15
NHK教育テレビ 特集
12月27日(火)10:00-
NHKハイビジョン 特集
2006年1月1日9:00-11:00
NHK-FM 特集