もの食う人びと 角川文庫
辺見 庸 (著) 価格: ¥720 (税込)
動物ドキュメンタリーが大好きであるが、彼らはとにかく食べる。
水族館で一番見たいものは、ラッコが食べるところ。
仰向けに泳ぎながら、貝を割るしぐさが可愛いいが、
それを実に美味そうにムシャムシャ食べる姿は、気持ちの良いものがある。
死ぬほど空腹で、死ぬほど眠いとき、多分、食ってから眠らないと、
先に眠ってしまうと、食っていないから死んでしまうかもしれない。
何の医学的根拠もなくそう思う。
私は先に眠ってしまい、死んでしまうだろうと思うが、
もしかしたら、先に何かを食うかもしれない。
生きるための本能が、私をそうさせるかもしれないな。
辺見庸は、1944年、宮城県生まれ。
1970年、共同通信社入社。北京特派員、ハノイ支局長、編集委員などを経て1996年退社。
この間、1978年、中国報道で日本新聞協会賞、1991年、『自動起床装置』で芥川賞、
1994年『もの食う人びと』で講談社ノンフィクション賞受賞。
他の著書に『赤い橋の下のぬるい水』『ゆで卵』『永遠の不服従のために』などがある。
辺見は、バングラディッシュ、フィリピン、タイ、ベトナム、ドイツ、ポーランド、
クロアチア、ユーゴスラビア、オーストリア、ソマリア、エチオピア、ウガンダ、
ロシア、韓国で、ものを食いながら人々の心にアプローチしていく。
「今度、飯でも食おう」とアプローチしてくる会社の上司のノリとは、
まったく次元の異なる話である。
私は、前に「人間は何を食べてきたか」という、食の歴史と文化についての、
優れたドキュメンタリーを紹介したが、それとも違う次元の、ノンフィクションである。
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/7586917.html
衣食は足り、平和ボケしている私たちは、つくづく幸せものである。
よく一緒に昼飯を食べる、私の周りの30歳前後の男たち、
食事前に軽く手を合わせ「いただきます」と言う。偉い。
私も、心して、天に感謝して「いただきます」と、胸の中で言うことにする。