遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

昭和初年のモダンなポスター/松竹座

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先日訃報が届いた京マチ子さんが所属されていた「OSK日本歌劇団」についてウィキペディアで読んでいたら、上の右のポスターが掲載されていました。

このポスターは、1930年(昭和5年)の大阪ミナミは道頓堀松竹座の「松竹大レヴュウ」のポスターです。ほぼ90年前のポスターです。

バスターキートン監督・主演の「キートンの結婚狂 」(1929)と、同じくアメリカ映画の「若き翼」(1930)という映画の二本立て上映と、OSKのレヴューの同時公演を知らせるポスターのようです。

左のポスターは、同じく道頓堀の松竹座での「キートンの結婚狂 」と「ヨーロッパ突進」(1929)という映画の二本立て上演告知ポスターです。こちらは、純粋に映画だけの封切りで、1929年の12月31日初日封切りの正月上映映画だと推測できます。

90年前にして、このモダンなポスターだったことに少し感動を覚えます。

印刷されたものなのでしょうが、原画に描かれている人物のおしゃれな雰囲気がとても上品ですし、文字のモダンなデザイン感覚は今に例を見ないような洒脱なレタリングによるものです。素晴らしい。

ゆったりとした時代感覚と、近代化に歩調を合わせた上質な文化を享受できていることを表象するような鮮やかなポスターです。

大阪の庶民のどれだけがこの映画や歌と踊りのレヴューを愉しめたのかはさておいても、正月の道頓堀で映画を観たり、またある時は、映画やレヴューを同じ劇場で楽しんだりしていたようです。

大正から昭和初期までが、近代日本で最も平和で楽しい時代だったような気がしますが、この数年後には、戦雲低く垂れこめるようになり「昭和モダン」は跡形もなくなり「進め一億火の玉だ」状態になっていきました。

こういう過ちは繰り返したくないものです。