遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

芸術も人生も長し/ようこそ!横尾温泉郷

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「芸術は長く人生は短し」と言いますが、芸術家は長生きするような気がします。
結核で夭折したお方もいましたが、一般的に長生きする人が多いと感じます。

横尾忠則センセイが80歳でまだお元気で活動されているのを見るにつけ、そう思うわけであります。草間彌生センセイも、87歳でまだ現役のバリバリですからね。

現在日本に存在する「名前が冠になった個人美術館」の当事者である芸術家を見てみると、長生きしたお方ばかりで、いい仕事を残した方は長生きだったとも言えるようです。(以下、お名前と享年、存命者は現在の年齢、個人美術館の所在地)

佐藤忠良(彫刻家)98歳 仙台市
土門拳(写真家)80歳 酒田市
斎藤清(版画家)90歳 福島県柳津町
藤城清治(影絵作家)92歳存命中 群馬県那須町
濱田庄司(陶芸家)83歳 栃木県益子町
丸木位里日本画家)94歳 埼玉県東松山市
東山魁夷日本画家)90歳 長野市ほか
田河水泡(漫画家)90歳 江東区
浜口陽三(版画家)91歳 東京都中央区
横山大観日本画家)89歳 台東区ほか
東郷青児(洋画家)81歳 新宿区
岡本太郎(洋画家)84歳 川崎市ほか
秋山庄太郎(写真家)82歳 港区
向井潤吉(洋画家)93歳 世田谷区
平櫛田中(彫刻家)107歳 小平市
中川一政(洋画家)97歳 神奈川県真鶴町
平山郁夫日本画家)79歳 尾道市ほか
葛飾北斎(浮世絵師)88歳 長野県小布施町
荻須高徳(洋画家)84歳 愛知県稲沢市
三岸節子(洋画家)94歳 愛知県一宮市
富本憲吉(陶芸家)77歳 奈良県安堵町
小磯良平(洋画家)85歳 神戸市
安野光雅(洋画家)90歳存命中 島根県津和野町

以上。死ぬまで現役だった方がほとんどでしょうから、60代初めの私などまだひよこのようなものです。

ただし彼らは、基本的には好きなように働いてきて食えた方だったでしょうから、長生きをして当然だとも思います。

大江健三郎小澤征爾も、80歳を超えて今なお現役で、芸術に携わると心も体も生き生きとするのでしょうね。

私は、ようやく好きなように生きていける身になったので、今から芸術家のように暮らせば長生きするかもしれません。ただし、まったく芸術的な素養がないうえ、収入もおぼつかない故、食っていけるかどうかが問題ではあります。

さて、画像は「ようこそ!横尾温泉郷」から。

上段左から
「乙女湯(へちまと壺)」 2004年
「金の湯」 2005年
「城崎幻想」 2006年
草津よいとこ一度はおいで」 2005年
「熊本温泉タンゴ」 2005年 
「銭湯」 2002年 

以上。ファンタスティックというかお気楽というか、まさに楽しい温泉郷の雰囲気は存分に出ています。

この展覧会には、横尾がプロの画家になったきっかけとなったポスターも展示されていました。

兵庫県の西脇高校を卒業して、加古川の印刷会社で働いていた横尾は、仲間と神戸で個展を開きました。たまたま横尾の作品を目にした神戸新聞の方が彼を同社にスカウトしたそうです。

それは1956年(昭和31年)のことだったそうで、頼まれてもいないのに静岡県の観光ポスター「SHIZUOKA」と、日航の宣伝ポスター「JAL」を作成して自分たちの個展に展示しました。その2作品(西脇市岡之山美術館蔵)が、今回の展覧会で展示されていましたが、お気楽な作品ではなく、20歳の若者らしいシリアスでモダンでお洒落で見事な作品でした。そりゃスカウトされるわな、というレベルの高さです。

ちょうど同じ頃、「べっぴんさん」のモデルとなった神戸のファミリアがはじめて東京に進出しました。

以上、60年前の神戸のお話でした。