遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

「おちょやん」来週に大団円を迎えます、おめでとうございます

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1948年12月、結成当時の松竹新喜劇のメンバー

上記画像、 前列右から3人目浪花千栄子、5人目二代目渋谷天外。後列左から5人目藤山寛美

おちょやんこと浪花千栄子は、上の写真が撮られてから3年後に松竹新喜劇渋谷天外(朝ドラでは一平)の元を去りました。

「おちょやん」は、朝ドラにしては珍しくドロドロした人間模様が描かれました。浪花千栄子の役を務めている杉咲花の目から、何度もポロポロと涙がこぼれ落ちました。ことほどさように、浪花千栄子の前半生は、貧困や戦争や人との別離などによる悲しい物語の連続でした。

昭和初期の女性の悲しみを、「おちょやん」の実在の主人公たちが体現していると思います。

私の幼少期のラジオの唯一の記憶は、花菱アチャコ浪花千栄子のコンビによる「お父さんはお人好し」でした。話の内容は憶えていませんが、主役の二人の明るい特徴のある声が潜在的に体内に染み込んでいます。前にも書きましたが、杉咲花の口調は浪花千栄子をほうふつとさせる素晴らしい演技です。

小学校に上がる頃(1960年)には、ラジオを聴くことはなくなりテレビの時代に入りました。ブラウン管のなかでも、アチャコ浪花千栄子の二人の活躍は顕著でした。

とりわけ関西の茶の間では、ふたりはキングとクイーン的存在でした。一方で、松竹新喜劇渋谷天外藤山寛美もまた舞台とテレビで横綱級の存在感でした。

ラジオと並行して、1950年代には、浪花千栄子はスクリーンでもその存在感を示していて、数々の名監督の映画の名作に名を連ねた、なくてはならないバイプレーヤーでした。やさしい母親役で彼女の右に出る者はいなかったと言えます。(黒澤明の「蜘蛛巣城」は例外ですがw)

ということで、来週「おちょやん」は最終週を迎えます。

おちょやんの後半生は、人や作品に恵まれた幸せなものだったと思いますが、きっとそのことが描かれた麗しい大団円(だいだんえん)になるのでしょう、おめでとうございます。

 

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