遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

マイケル・ムーアの世界侵略のススメ

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2015年製作のマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画「世界侵略のススメ」を、Amazonプライム・ビデオで鑑賞。

Amazonプライムのおすすめ映画やビデオは、食指が動くことがないのだが(高い料金を払っているのに)、昨夜は偶然マイケル・ムーアのこの作品を見始めた。

面白くて、プライム料金は少し取り戻した感がある。(Youtubeで、タダ見できるようだけど)

ムーアが、アメリカより優れた制度のある国をめぐって、その素晴らしい制度アメリカにちょうだいという、可愛い「世界侵略」映画。

ムーアが訪れた国は、フィンランド、イタリア、ドイツ、フランス、スロベニアポルトガルチュニジアノルウェースウェーデンアイスランド。(どこか漏れているかもしれない)

そのさわりをいくつかご紹介する。

フィンランドは、宿題のない初等教育を実施しているにも拘わらず、教育レベルが世界一という国。芸術科目が減ってきているというアメリカ事情を、信じられないという顔で聞くフィンランドの女教師。

ドイツやイタリアは、企業を訪れて、長い有給休暇や短い就業時間で生産効率を上げている実態を紹介。労使ともに「長い休暇」が生産性を上げると断言する。

フランスは、初等教育の学校給食(ごちそう!デザート付き!)の実態を取材する。

スロベニアは、大学の授業料免除の実態を取材。アメリカで授業料が払えないという学生たちが、この天国のような国を目指す。

ノルウェーは、高級保養地に建つコテージ風の快適な刑務所を取材。刑務官は銃も持たず受刑者と信頼関係があり、再犯率も極めて低いという。どんな凶悪犯でも、懲役は21年がリミットだという。

アイスランドは、世界一の男女平等国。どこかの企業の女性CEOは、「アメリカにはいくらお金をもらっても住みたくない。一部の富裕層に虐げられた人たちが多すぎる。かわいそうで見てられない」みたいなことをムーアに言う。

あらためて、ムーアと一緒にヨーロッパの国々を見て回ると、まあ恵まれているというか、賢い国造りが行われていることが、想像を超えて手に取るように分る。

北欧などの国民のための優れた制度は、高い税金を払っているからなのだが、しかし、手に入れられる制度を自前で支払うとなると、とんでもない費用が掛かることを気づいていないアメリカ人と、ムーアは分かりやすく図説する。これは、そっくり日本にも当てはまっている。

マイケル・ムーアが「うらやましい」と首を振ると、「このシステムはアメリカに学んだんだよ」「この制度は、アメリカの置き土産だよ」「ああ、前例はアメリカにあるんだ」と、各国の各分野のリーダーが異口同音に言う。公民権運動も、男女同権も、メーデーアメリカから始まったのだと。

アメリカンドリームはもうアメリカにはなくて、ヨーロッパをはじめとした成熟な国に輸出されたままなのだ。

ムーアは、さすがにこの映画の取材で日本には来なかったが、来るわけがないのだが、世界一素晴らしい日本国憲法アメリカの残した最上の置き土産だということくらいは気付いているはずだ。

トランプを批判した最新作「華氏119」、面白くないわけがないだろう。